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- 2024/05/31 掲載
オンプレはなぜ安く見える? ガートナーが「クラウドのほうが安い」と断言できるワケ
オンプレミスのほうが安価に見える「6つ」の理由
「ガートナーの調査によると、オンプレミス環境よりもクラウドのほうが安いという結果が出ています。その理由をこれから説明しますが、例外はたしかに存在します。しかし、実際の例外よりも、例外であると思い込んでいる人のほうが多いことを伝えなければいけません」と語るのは、ガートナー シニア プリンシパル アナリストのオータム・スタニシュ氏だ。「例外となるのは、オンプレミス環境以外では動かせない特別なワークロードの場合のみです。ただ、多くのワークロードは残念ながら、そうした特別なものではないことのほうが多いのです」(スタニシュ氏)
そこで、スタニシュ氏は「なぜ、オンプレミスのほうが安価に見えるのか?」という質問に対して、次の6つの理由があると説明する。
まず1つ目は、「比較が間違っている」点だ。
オンプレミス環境とクラウドを比較する際に、「仮想マシンを動かす場合、オンプレミスのデータセンターとクラウドでは、どちらが安いのか」という質問をよく受けるという。スタニシュ氏は、そうした比較をすること自体が間違っていると指摘する。
ガートナーでは、クラウドを「インターネット・テクノロジーを活用して、拡張/伸縮可能なIT関連機能が“サービスとして”顧客に提供されるコンピューティング・スタイル」と定義している。そのため、スタニシュ氏は「サービスと物理的なサーバを比較することはできません」と説明する。
また、サービスとして提供されるクラウドにはいくつかのオプションがあり、それらを利用してクラウドに移行する最初の一歩を踏み出すことが可能になるという。具体的には「サービスとしての機能(FaaS)」「Step Functions」「サーバレス・コンテナ」「ホスト型Kubernetes」「クラウドVM/インスタンス」などが挙げられるが、それぞれのオペレーションの複雑さとコストは異なるという。
「クラウドへのシフトチェンジは基本的にリフトアップするだけというわけではありません。まずは、クラウド移行をこれまでとは違った角度から考えるべきです」(スタニシュ氏)
オンプレミスは「そんなに安くない」可能性も
2つ目は「オンプレミスのコストを過小評価している」点だ。スタニシュ氏は「実際、データセンターのコストを適切に分析するのは非常に困難です。また、社内政治などの要素が絡んでくることもあり、自分の部署の数字が少しでもよく見えるように見積もってしまうことも考えられます」との見解を示す。
「しかし、すべてのシリアルナンバーを追跡し、購入時の価格を確認するレベルまで詳細なコストを把握することも重要です。インフラそのものを改めて見直す必要があります」(スタニシュ氏)
その一方で、「多くの人はメンテナンスについて理解しておらず、サービスデスクのチケットをすべて調べて、実際にどれだけのコストがかかっているのかを調べようとする人はほとんどいないでしょう。つまり、インフラのコスト分析には多くの複雑な要素が絡んでおり、率直に言って自分自身で分析する時間がないのが現状なのではないでしょうか」と指摘する。
スタニシュ氏は、ガートナーが提供しているオンプレミス・データセンターの全コストを分析できるシートの活用を推奨している。同シートでは、パブリック・クラウドとの比較に適したデータセンター・コスト・モデルの作成方法を把握でき、データセンターのコストを正確に知ることが可能になるという。
そして、3つ目は「品質を考慮に入れていない」点である。
「クラウド・プロバイダーが提供する機能を自分たちの環境で実現することは難しいですが、クラウドはオンプレミスでは実現できない、さまざまな機能を有しています」とスタニシュ氏は説明する。
実際、スタニシュ氏の顧客の多くが、現時点ではクラウドが持つ基本的なオートメーションすらできていないという。「クラウドに移行することで、そうした複雑な作業を取り除くことができます」(スタニシュ氏)
続いて、スタニシュ氏は、同僚の1人がサーバ・エンジニア時代のデータセンターに冗長性を持たせる際の話を持ち出した。それによると「同僚が所属していた会社では、4日間道路を封鎖して、その下にファイバー・ケーブルを敷設し、再び道路を舗装し直すという作業を強いられたことがある」という。
「コロケーション・プロバイダーでさえ、ティア3やティア4のデータセンターを建設するのは一筋縄ではいきません。こうした冗長性の拡張も、クラウドであればボタンを1つクリックするだけで済みます。インフラを運営する上では、品質を考慮することは非常に重要です」(スタニシュ氏) 【次ページ】企業がクラウドへ「過剰支出」してしまうワケ
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