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  • 2009/02/17

【インタビュー】不況下を生き残るための企業力を支える、人材力と情報力の強化 (2/2)

組織ぐるみで社員を育てる
「ワークプレイスラーニング」の実践で社員力が組織力に

 森戸氏は、こうした企業内での戦略的な情報共有・活用のあり方は、人材育成の観点で大きな成果を期待できると主張する。

  「企業内における人材育成というと研修機関の研修を受けるというイメージがありますが、研修で講師から伝達される情報や知識も情報システムで流通する時代になり、企業で必要とされている研修の内容や形態も大きく変化しました。知識習得などが主目的とされている研修であれば、e-Learningなどで代用できるかもしれません。また、そのe-Learningの形態も紙芝居形式の静的教材ではなく、個々の社員が抱えている業務の課題解決につながる動的教材として社内の情報システムを活用するということも検討されています。このように業務を通じて学ぶという『ワークプレイスラーニング』の考え方、業務の課題を組織で解決していくというスタイル『ラーニングオーガニゼーション(学習する組織)』に着目して、考える姿勢を持つ社員、価値を創造できる社員作りに注力している企業が不況下にも関わらず急速に増えてきています」。

 ワークプレイスラーニングというと耳慣れない人もいるだろうが、いわゆるOJT(On the Job Training)とほぼ同義である。日常の仕事を通じて知識や仕事のノウハウを身につけていくのは、これまでもほとんどの企業の現場で行われてきた人材育成の方法だ。

 「OJTと大きく違うのは、OJTではトレーナーとトレイニーが1対1で向き合うのに対して、ワークプレイスラーニングでは、組織として人材育成に取り組み、誰もがみな、教え教えられる関係にあることです。組織の構成員全員が業務を通じて育つことを目指します。たとえばA君の企画書が不出来だったとしても、その企画書を教材としてどのように変えていくのがベストなのかということを組織全員で考えていきます。お客さまからのクレームなどに対しても、当初のお客さまの期待の確認と対応方法の問題点の認識、次の対応姿勢の理解を組織全員で行うことで、個々の社員も育ちますし、組織としての力も強くなります」。

 ワークプレイスラーニングは、特定の人間が特定の人間を育てるという概念ではなく、組織として仕事に取り組み、組織としての成果の最大化を目指していますので、「ラーニング オーガニゼーション=学習する組織」という概念のもとにナレッジワーカーが育つというのが大きな特長なのだ。

 「ただし、ここで注意していただきたいのは、人材を効率的に育てることが第一義ではないという点です。大事なのは、個々の社員を組織的に巻き込むことで組織全体の成長へのモチベーションを上げることであり、そうしたプロセスの中で若手社員の成長を組織的に支えることができ、精神的なサポートも可能になります。企業内にコンピュータシステムが導入される以前は計算や暗記といった情報処理も人間に必要な業務遂行能力と言われていました。しかし、これらの業務処理はコンピュータがいくらでも肩代わりしてくれる時代に、人間の役割は創造力を発揮して新しいビジネスのあり方や、激動の時代の生き残り方法を探っていくことになります。企業のサバイバビリティという面からも、次世代の人材育成にはそうした観点から臨むことが何よりも大切です」。


人材力強化・情報力強化のツールとして
グループウェアの可能性に着目

【知財/知識活用】

「危機管理のマインドを確立できた企業
にとっては、グループウェアは人材力強化、
ひいては企業力強化の有効なツールと
なるに違いありません」


 ここまで話を伺ってきて、人材力の強化にナレッジマネージャー=情報の目利き役が大きな役割を担っていること、組織全体で人材の成長を望むという姿勢が必要であるということがわかった。だが、これをさらに強化するための賢いITツールの活用のポイントを知ることはできないのだろうか。この質問に対して森戸氏は、グループウェアの活用を例にして説明してくれた。

 「たとえば、グループウェアなどの社内情報共有ツールの活用にあたっては、ツールの導入目的、業務における役割を事前に正確に認識しておくことが重要です。グループウェアを導入している企業の活用方法を検証してみると、ほとんどの企業でグループウェアのスケジュール機能は自分のスケジュール管理のために使われています。それが目的であれば手帳は必要ありません。スケジュールを共有するということの目的は、他のメンバーの行動を促すということにあります」。

 森戸氏は、「管理職がグループウェアにスケジュールを記入するのであれば、予定されているスケジュール以外に『この日時は空いている』ということを明確に部下などに見せるように気配りをしなくてはならない。予定が書かれていない時間も部下などに提供できない時間が上司にはあるはずだ。それを明確にしないと部下はスケジュール調整ができない」と言う。

 「逆にスケジュールを目一杯書き込んでいる上司もいますが、これは部下などから見ると『時間の調整は不可能だ』という宣告にしか見えない。極端に言えば、『君たちの相手をしているヒマはない』と言っているようなものです。そうではなくて、『この時間なら空いているから、お客さま先への同行ができる、業務に関する相談に乗れる』というメッセージをスケジュール機能を使って部下に発信することが、組織の活性化、個々の社員の行動による組織全体の社員力強化、組織力強化につながります」。

 これらの基本的な社員の行動を促す情報提供、共有を意識しないまま情報基盤整備ばかりが議論されている。これらを意識することなくシステムを導入してしまい、グループウェアは使えないとなどという企業があまりに多いと森戸氏は指摘する。

 「かつてはそれぞれ別物として考えられてきた情報化戦略と人材育成戦略が、いま非常に密接に融合しつつあります。たとえばこれまで基幹系システムの主眼は業務の効率化であって人材育成戦略とは別の次元でしたが、これが基幹系システムから抽出された情報を活用していくという情報系システムの目的を考えると、情報化戦略と人材育成戦略は大きな関係性を持ってくる。システムから提供される情報が社員にどのような行動につながり、その行動からどのような気づきが生まれるのか。グループウェアというシステムは人の行動を促すシステムであり、その人の動きを、グループウェアを利用する個々の社員がどれくらい意識しているのかが成果の度合と比例している。ここに気づいている企業は、グループウェアを人材育成の戦略的ツールとして活かせるようになるでしょう」。

 情報共有の目的は、社内の末端まで浸透されていないとシステム導入の意味を果たさない。会社が何を考えて、何をしようとしているのかが伝わり理解できてこそ、人は動き、成長すると森戸氏は語る。

 「何もドラスティックに組織やプロセスを変える必要はありません。それよりも、情報システムの特性と時代の変化を意識して情報活用や人材育成に対する思い込みを捨てる必要があります。今までと同じやり方を継続するという意識は、システム導入という変化を促す行動とは逆行しています。情報システムが導入されていない時代との決別が急務です。仕事に対しての考え方を変えるのではなく、仕事のやり方を変える必要があるのです。そういう意味では、今回の世界的な大不況は大きなチャンスでもあります。危機を感じた時に人間は変化に対して寛容になります。グループウェアという情報共有の基本的なツールでも企業力強化の有効なツールとなるに違いありません。システムに魂を注入するという意識を持ってもらいたいと思います」。

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