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  • 【インタビュー】不況下を生き残るための企業力を支える、人材力と情報力の強化

  • 2009/02/17 掲載

【インタビュー】不況下を生き残るための企業力を支える、人材力と情報力の強化

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100年に一度といわれる不況のもと、大幅な人員削減の一方で仕事量は増加し、そのクオリティはより高いものが要求されてくる。刻々と激しい変化を続ける経済や市場に迅速な対応を行う上で、ナレッジワーカーと呼ばれる価値創造を担う人材の育成と、その育成を目的とした情報インフラとしてのIT整備は不可欠だ。今回は、2月25日に開催される「不況下の企業経営に求められるIT戦略セミナー~今こそ情報共有基盤の強化で社員力を活かす」の基調講演スピーカーであり、次世代人材としてのナレッジワーカーの育成にくわしいコンサルタント 森戸裕一氏に、不況下を生き残るための人材力強化と、情報インフラを活用したワークプレイスラーニングの考え方、それらによる企業力の強化についてうかがった。

すべての中間管理職が
「ナレッジマネージャー」になることからはじまる

【知財/知識活用】

ナレッジネットワーク 代表取締役社長
サイバー大学 客員教授
森戸裕一氏


 森戸氏は、企業の人材力の強化を語る前に、まず本格的な情報化、知識化時代を迎え企業を取り巻く枠組みが情報流通の観点で大きな変化を迎えていることを知るべきだと言う。

 「現在の世界的な不況を生き抜くという観点でも、情報流通の変化が企業経営に大きな影響を与えているということを意識しないといけません。具体的には、市場における情報流通量の飛躍的な増加です。総務省の統計では、『選択可能な情報=人が取ろうと思って取れる情報』の量が、10年前と比べると約500倍になっている。これだけ企業を取り巻くビジネス環境が変わっているのに、企業における社員の仕事のしかたは10年前と大きく変わっていません。このギャップに、まず注目する必要があります。お客さまが情報を知らない状況であれば、メーカー側が、自分たちが作った製品の機能がいかに優れているか、自分たちのサービスがいかに細やかかということを広告戦略の中で打ち出すという、製造から販売、サポートまでのプロセスの説明で十分ですが、お客さまが自分たちで欲しい製品やサービスを主張する時代となり、当然のようにメーカーも仕事の根本的な考え方を変える必要にせまられています。今回の世界的な不況も米国のサブプライム問題が事の発端にはなっていますが、本質的な問題はモノがない時代からモノが溢れている時代になったということと、消費者が主張をはじめたということにあるのではないかとも言えるのではないでしょうか。これらの変化の予兆を見逃してしまうことが、そのまま企業リスクにつながる時代になっているのです」。

  こうした情報化時代にあって、次世代人材育成のポイントは自社に必要な情報の目利きであって、その情報目利きを担うのがナレッジマネージャーであり、すべての中間管理職は社内情報流通のハブとなるナレッジマネージャーになるべきだと森戸氏は言う。

 「最近、中間管理職の方で自分の仕事のやり方や自分の存在意義自体に自信をなくしてしまっている方が増えてきているように感じます。たしかに従来の中間管理職がやらなければならなかったルーチンワークは情報化により効率化され、従来と同じ中間管理職としての仕事のやり方をしていては自分の存在意義に疑問を感じても仕方ないと思います。全社統合システム(ERP)の導入や社内ワークフローなどが導入されることで効率化された時間をどこに振り向けるかということを議論しないと組織力を向上させという中間管理職に求められている仕事で成果を出すことはできません。情報化時代における中間管理職のあり方ということを考えると、「情報や知識」が大量に社内流通する時代において中間管理職の方々に求めることは、その情報の精査ということになります。情報を精査するには経験が必要になり、その経験を持って情報流通をサポートするのが中間管理職ということになります。この情報流通のハブとも言える役割を担っている方々を私たちはナレッジマネージャーと呼び、その役割を中間管理職に求めています」。森戸氏は、情報流通による組織力向上のためにはナレッジマネージャーの存在が重要だと言い、その役割は業務経験が豊富な中間管理職が担うべきだと力説する。

 「若手社員には、過去に積み上げた業務経験がありません。中間管理職はその経験があるからこそ若手社員の育成ができるのです。情報や知識を単に知っているだけでは仕事はできません。ひるがえって、いま中間管理職の職にある人は『自分が情報の目利きをしない限りは、どんなに優れた情報システムを導入しても情報化投資の成果は期待できない』ということを自覚すべきです。在庫状況などの生データは意図を持って加工することで情報になり、情報は業務内容などが付加されて知識になります。ここまでは情報システムで蓄積したり、流通させることが可能です。しかし、その知識を“知恵”にするには社員個々が知識をもとに行動しないとはじまらない。しかし、業務経験に乏しい若手社員は知識を得ることのみが仕事と思い、行動を躊躇ってしまう傾向にある。これを打破するには業務経験が豊富な人間が率先垂範で行動してみせるか、自分の経験を語って背中を押すしかない。ナレッジマネージャーとなるべき中間管理職は、そこをきちんと理解して、みずからの職責(部下育成)を果たしていかなくてはなりません」。

ナレッジマネージャーは
使える情報を見つけ出す選別眼を

 ナレッジマネージャーの仕事の最終的な目的は99%、部下を育てることにあると森戸氏は断言する。

 「自分の仕事は『部下を育てる=タイムリーな情報を提供し行動により仕事の成功イメージを持たせる』ことだという意識を持てれば、おのずと従来の中間管理職の仕事のスタイルからの変革が必要となってきます。自分の経験を部下が抱えている業務に即して語ろうとすれば、最新の社内外の情報に自分の経験を付加するというイメージが仕事のイメージになります。だから社内の統合システム(ERP)は必要になります。また、社内に類似商談があるのであれば、その商談対応の経緯を分析して受注につながる最短経路を探ったり、取引先やお客さまからのクレーム情報などがあればそれを取引先やお客さまからの期待の裏返しと認識して部下の行動イメージを明確にすることも可能です。上司が本気で部下を育てようとしたら、自分の経験に基づき社内で流通している最高の情報をピックアップして提供し、部下の成功を本気で望み必死にフォローアップするようになるのです」。

 その情報を何のために使うのかという意識を本気で考えると、膨大な情報の中からでも必要なものがおのずと浮かび上がって見えてくるものだという。

 そうした意味で、ナレッジマネージャーは情報のファシリテーターであるべきだと森戸氏は言う。組織のスタッフ個々の立ち位置や役割を認識している中間管理職が、各人のパフォーマンスを最大化できるよう情報の選択と提供というファシリテーションを行い、失敗しても気づきを得ることができるまでの行動イメージを事前に持たせるということになるのだろう。

 「社内に流通する情報が膨大になりすぎて、ファイルサーバやグループウェアなどにとりあえず情報が蓄積されているということを見過ごしている中間管理職が少なくありません。たしかに、従来の職責にその情報の精査というものはありませんでしたが、次世代を担う若手社員の育成、部下の成長を願うのであれば重要な仕事になります。その重要な職務を放棄して、情報精査の意識もなく単に情報を右から左へ流している管理職が多い。業務経験に乏しい若手社員や部下が情報過多な状態になると、考えない、行動しないという状態になる」と手厳しい。

 社内の情報共有のかけ声ばかり先行してやみくもに末端の社員まで全情報を渡してしまうと、かえって誰も考えなくなる、動かなくなるという視点は新鮮だ。

 「情報をただ伝えることだけを目的とした伝達会議は、組織の中ではもはや弊害の方が大きい。同じように、とりあえず情報を共有するために作られたフォルダなども意図が伝わらない情報が膨大に蓄積されてしまい、活用とは程遠い情報のゴミ箱のような存在になってしまう。企業の経営的な方針、事業計画などを理解し、部下の成長を望むナレッジマネージャー=社内情報のファシリテーターの情報選別眼があってこそ、初めて知恵に昇華する情報や知識が組織の中で共有され、活用されるようになるのです」。

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