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  • 【本田透氏インタビュー】三国志、ライトノベル、そしてメディアミックス――コンテンツの展開を考える

  • 2010/07/07 掲載

【本田透氏インタビュー】三国志、ライトノベル、そしてメディアミックス<br>――コンテンツの展開を考える

『ろくでなし三国志』『ライトノベルの楽しい書き方』著者 本田透氏インタビュー

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コラムや評論からライトノベルにいたるまで幅広く執筆活動を続けている本田透氏が、『ろくでなし三国志』(ソフトバンク新書)を上梓した。三国志の群像の意外な側面を著者自身の妄想と絡めながら軽妙に論じた一冊である。また、一方で本田氏の書いた人気作品『ライトノベルの楽しい書き方』(GA文庫)は映画化が決まり、2010年末の公開が予定されている。今回は新刊、そしてライトノベルからメディアミックスにいたるまで、本田氏の最近のお仕事を中心にお話を伺った。

世相を映し出す三国志!?

――『ろくでなし三国志』では意外な観点からあの時代と群像を読み解いていらっしゃいますが、もともと「三国志」はお好きだったのでしょうか。

 本田透氏(以下、本田氏)■嫌いなものについて一冊分も書けるはずないじゃないですか! 子供の頃、実家に吉川英治の『三国志』全巻がなぜかあったのでそれを読み、そのあとには横山光輝の漫画『三国志』で孔明の知謀を刷り込まれ、そして高校生の時に光栄(現在はコーエー)のPCゲーム『三國志』にハマったという感じです。あのゲームは、第一弾の時点から周瑜や陸遜が妙に美系だった記憶があります。あの頃は、孔明が周瑜に押し倒されたり魏延に××されたりするやおい系の三国志小説とかも読んでいましたね。三宮の書店で買ってたんですが、すごく買いづらかったです。あとはバブル時代の『蒼天航路』のファンでした。北方謙三や酒見賢一の描く三国志ものも好きです。でも、いちばんハマった三国志小説は陳舜臣が書いた『秘本三国志』ですね。「三国志演義」を無視し、正史を独自の視点から解釈し直していて。この新書も、陳史観というか秘本史観の影響はかなり受けています。

 好きな理由は、やっぱり登場人物のキャラがすごく立っているところ。なにしろ物語が三国同時並行ですから、キャメロットで内ゲバばっかりやっている『アーサー王伝説』よりも多くのキャラが立っていますよね。あとはなんでしょう、勝ち組がいないみたいながっかりな結末とか。さんざん負け犬だった劉備が孔明を得てがーっと行くのかなと思った途端に転落の鬱展開とか、子供の頃は史実を知らないで読んでいたのでそれはもうドキドキでした。「え~関羽死ぬの?」みたいな。

――歴史ブームというのもあるのでしょうが、三国志は昔から日本人にも人気があります。その理由はどのあたりにあると思われますか?

 本田氏■昔は、劉備・関羽・張飛の三人組と、諸葛孔明の知謀。蜀キャラが人気だったんだと思います。判官贔屓とか軍師好きとか任侠好きとか、結局勝てない悲劇的なところとか、どれも日本人好みですよね。これは勝手な推測ですけど、吉川英治の時代には、おそらく魏がアメリカ、蜀が日本に比されて読まれていたのかなあと。それをそのまんま作品にした『孔明の艦隊』という名作もありましたが。

photo

『ろくでなし三国志』

 戦後は経済が上向いていくのと並行して徐々に曹操の人気があがり、バブル時代に頂点に達した感があります。あと、趙雲と呉が女性ファンまでつかんでいるところがちょっとそんじょそこらのコンテンツじゃ真似できないですよね。基本ヒゲオヤジしか出てこない話なのに。中国では最近は曹操の墓が発見されたりして、彼の人気も出てきてるようです。やっぱり国がバブルでイケイケになると曹操ファンが増えるのかなあと(笑)。その国のその時々の世相によって人気が出るキャラが違っているあたりが奥深いというか、民衆の精神史を一望できるような感じで面白いですよね。

――本書では多くの人物が取り上げられていますが、とくに孔明については多く論じられていますね。

 本田氏■できるだけ大勢の人物を書こうとしたのですが、なぜか孔明がどうしても目立ってしまいました。どういうわけか、書いているうちに「もしかしてこの人はあとあとまで中国そして日本にまで甚大な思想的影響を及ぼした人なんじゃないか……」という閃き(妄想)にとりつかれてしまった気がします。きっと孔明の罠だ!

 孔明のキャラクターって、いろんな作品で「すごいすごい」と持ち上げられていますけど、なにがどうすごいのかあまり説明されてこなかった気がするのです。とにかく孔明はすごいからすごいんだ――みたいな。「政治家としては一流で、軍事は二流で、天下三分を考えた」という評価が割と定まっているわけですけど、褒めるほうも腐すほうも謎めいた孔明の正体にまで行き着いていない気がしまして。いったいこの孔明のなにがどうすごくて後世まで天才軍師としてちやほやされていたのだろうか……ということをあれこれ考えているうちに、本書では変わった孔明論を展開することになりました。

――ちなみに本田さんは三国志で好きな人物がいらっしゃいますか? 幾人かいらしたらお教えください。

 本田氏■奇をてらって「木鹿大王(ぼくろくだいおう)」とか言いたいところですが、蜀の軍師の一人であるホウ統(注1)がいちばん好きです。「孔明は生まれながらの天才故に速攻で天に昇る臥龍だが、ホウ統は間違って間違って経験を積んでいって悩みながら鳳になる」とかそういう評を昔何かで読みまして、きっと自分はホウ統タイプなんだなあと勝手に思って泣きました。しかもホウ統、経験値を積む前に死ぬし。見た目が悪くて出世が遅れたとか、とにかく孔明を持ち上げるために言われたい放題……。でも考えてみればホウ統に己をなぞらえるのがそもそもの勘違いで、といいますかニート時代の孔明が自分を管仲・楽毅になぞらえるよりもひどい誇大妄想で、実際の自分は曹豹タイプかもしれません。呉だと魯粛ですね。理由はまあ、この本を読んでいただければと(笑)。

注1:ホウ統のホウはまだれに龍

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