年間で4.8TWh、1300億円!
Opowerが日本経済にもたらすエネルギーの節約効果
地球規模で省エネルギーが叫ばれる中、データ解析と行動科学に基づき、エネルギーとコストの節約を実現するプラットフォームを提供しているのが米国ベンチャーのOpowerだ。現在、同社は米国を中心に9か国93社の公共事業と提携し、計3200万人もの顧客を抱えているが、この夏ついに日本にも進出することになった。このことは、日本にどのようなインパクトをもたらすだろうか? 同社のアレックス・ラスキー氏は、Opower設立の経緯を次のように語る。
「エネルギー不足は、経済の大きな足かせになる。しかし、普段から無駄に使っているエネルギーに、ほとんどの人が目を向けない現実がある。7年前にOpowerを設立したとき、ハードウェアだけでなく、ソフトウェアでも消費者の行動を変えられると思った。ビッグデータ、コンピュータサイエンス、行動科学を駆使して、エネルギーのデータをパワフルで面白い情報に加工して、この分野で意義のあるイノベーションを起こしたいと思った」(アレックス氏)
エネルギーを節約するには3つの大きな施策が必要だ。1つ目はピーク電力の削減、2つ目は電力全体の省エネ。3つ目はエネルギー事業者と消費者の関係改善だ。では一体どうやって消費者に省エネ意識を持ってもらうのか? それは行動科学の問題だとアレックス氏は言う。
「過去の調査では、隣人がエアコンや扇風機を止めたら、自分たちも協力すると答えた人がとても多かった。つまり消費者は他人の行動に大きな影響を受けるということ。そこでソフトウェアにより、これを実現しようとした。我々のサービスは、似たような環境の家庭でどのくらい省エネを達成したのか、その情報を知らせ、アドバイスを行っていくものだ」(アレックス氏)
具体的には、使用電力の状況を分析し、Eメールや携帯SMS、電話、Webサイトなどにより、近隣ユーザーとの電力比較や、消費電力の月別推移を通知したり、家庭環境を踏まえた形で節電の方法をアドバイスするというサービスだ。
アレックス氏は、同社のプログラムにより、ボルチモア・ガスがエネルギー全体の消費削減に成功した事例を示した。さらにユーザーのためにパーソナライズされたタイムリーなコミュニケーションを電子メールやショートメッセージなどで提供し、ピーク時のエネルギーも5%削減できた。その結果として、平均で6ドルほどのコスト効果があったことも各ユーザーに伝えたという。
さて、気になる日本への進出だが、Opowerは今年初頭に東京電力(TEPCO)と契約合意を発表した。この7月から2年間の予定で、約2000万世帯に同社のサービスを提供する方針だ。具体的には、TEPCOのホームページ「でんき家計簿」における電力使用状況の見える化と、スマートメーターで収集されるデータの解析に同社のサービスが使われる。
「日本の公益事業と手を組むことで、日本経済に対してプラスの効果をもたらせると思う。Opowerのサービスを導入すれば、年間で4.8TWh、1300億円の節約になる試算だ。情報を提供することによって、これだけのインパクトを与えられる。もし我々がボルチモアで実施したことを東京でも行ったら、1GW分の電力を削減できるだろう。これは首都圏1日分の消費に相当し、4000億円の資本の繰り延べになる。これからも日本のアントレプレナーシップを持った人々と共に仕事を進めたい思っている」(アレックス氏)
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