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  • 2015/08/28

築地市場の仲卸業者がなぜ料理教室を開くのか? 縮小市場での生き残り戦略

旬の魚をさばき、料理して食べる「築地お魚くらぶ」は、毎回定員の3~5倍の応募がある、超人気の体験型料理教室だ。この料理教室、なんと運営しているのは築地の仲卸業者である。オプンラボ主催のセミナーに登壇した島津商店の島津 修氏は、漁業の現状や仲卸業者が生き残るための新たなビジネスへの取り組みについて語った。

フリーライター 井上 猛雄

フリーライター 井上 猛雄

1962年東京生まれ。東京電機大学工学部卒業。産業用ロボットメーカーの研究所にて、サーボモーターやセンサーなどの研究開発に4年ほど携わる。その後、アスキー入社。週刊アスキー編集部、副編集長などを経て、2002年にフリーランスライターとして独立。おもにロボット、ネットワーク、エンタープライズ分野を中心として、Webや雑誌で記事を執筆。主な著書に『キカイはどこまで人の代わりができるか?』など。

前編はこちら

農業と漁業の相違点から考える、小規模従事者の生き残りの道とは?

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島津商店 代表
島津 修氏
 築地中央市場で仲卸業を営む島津商店の島津 修氏と、茨城県で農業を営む久松農園の久松 達央氏。オプンラボ主催イベントでは、両者の生き残り戦略が語られた。

 久松氏は、現在7名のスタッフと、年間50品目以上の旬の有機野菜を栽培し、契約消費者と都内の飲食店に直接販売している。ITを活用して消費者との関係を強め、ソーシャル時代の新しい有機農業を展開する異色の存在だ。


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久松農園 代表
久松 達央氏
 久松氏は「農業で生鮮野菜の味を決めるのは、鮮度・品種・栽培時期だ。このうち鮮度は、産地直送でクオリティが担保され、ハイエンド領域の一部を取れる。これが我々のビジネスモデルだ。しかし漁業では、鮮度が必ずしも高品質を担保しない。そこでキュレーション的な目利きが必要で、ニーズに合わせて津々浦々の魚を振り分ける力が求められる。それが卸売の腕前ならば、資本の大きな業者でも真似できない。面倒な部分だが、ここに仲卸が生き残れる道がある」と分析する。

 前編で語られたように、値段が安くボリュームのある領域は、築地市場でも一番先に商社や大手スーパーなどに奪われていった。これは農業も同じだが、ハイエンド領域はどうだろうか?

 島津氏はこれに同意しつつ「農業との決定的な違いは魚が天然資源であり、漁獲量が読めないこと。1カ月も漁ができないこともある。そのとき入荷されたものを納品するしかない。そこで重要になるのが目利きの腕である。たとえば一般的に需要が高い初物のサンマが入荷しても、クオリティ的に納得しなければ、自分はお客さんにお薦めしない。そんなときはサンマの代わりに、北海道で取れたサンマの味がするイワシを寿司屋に提案することもある。これが我々の仕事なので、決して大手小売り業のように大きな商いはできない」と、相違点について説明した。

 大きな商いができない点は農業も同じだ。「一次産品は出来が環境に左右される。その”振れ”や”揺らぎ”こそが価値とも言えるが、農産品の場合は“旬”をなくし、振れない方向に舵を切った。季節性をなくし、年中トマトを棚に置けるようにした。商社はボリュームゾーンを狙うため、夏と冬のトマトの味は気にしない。そこで産地形成が行われ、夏トマトは涼しい地方、冬トマトは暖かい地方で安定供給を確保しようと考えた。しかし、将来的に植物工場のように完全に工業化される時代になれば、小農家は、資本を持つ企業に勝てない。これは漁業の場合と同じアナロジーだ」(久松氏)

【次ページ】島津商店がチャレンジするB2Cビジネス

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