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  • 2015/01/26

農業と飲食業の共通課題 ITの活用で「小規模でも強いビジネス」は実現できるか?

久松農園 久松 達央氏、トレタ 中村 仁氏が対談

新たな有機農業の旗手として全国から注目を集める久松農園の久松 達央氏と、iPadを活用した飲食店向け予約管理アプリ「トレタ」を展開する中村 仁氏。農業と飲食業という異なる業界にいる両氏は、オプンラボ主催イベントに登壇して自社の取り組みを紹介。さらに、大規模農園やチェーンの飲食店舗に負けない、小規模でも強いビジネスを実現するため議論を交わした。

フリーライター 井上 猛雄

フリーライター 井上 猛雄

1962年東京生まれ。東京電機大学工学部卒業。産業用ロボットメーカーの研究所にて、サーボモーターやセンサーなどの研究開発に4年ほど携わる。その後、アスキー入社。週刊アスキー編集部、副編集長などを経て、2002年にフリーランスライターとして独立。おもにロボット、ネットワーク、エンタープライズ分野を中心として、Webや雑誌で記事を執筆。主な著書に『キカイはどこまで人の代わりができるか?』など。

生き残るためには「勝てない土俵では戦わない」

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久松農園
代表取締役
久松 達央氏
 久松農園 代表取締役 久松 達央氏は大学卒業後、大手繊維メーカーの帝人に就職。4年後に同社を退職後、1999年から茨城県土浦市で有機農業を営んでいる。年間を通じて屋外で育てた野菜を50品目以上も作り、Webなどから契約消費者と都内の飲食店に直販している。

 農場・出荷担当スタッフは合わせて数名と小規模なため、久松農園は大規模農園のように「安定供給」や「大量生産」ができない。そこで久松氏は、はじめからこのふたつを捨てた生き残り戦術を展開している。

「生き残るために重要なのは『勝てない土俵では戦わない』ということ。一般市場の流通に乗せて安売りをせず、多品目・直販・露地という逆張りでやってきました」

 消費者に喜んでもらうためには「安い」よりも「おいしい」野菜をつくることだと語る久松氏は、生鮮野菜の味における3要素を説明した。

「生鮮野菜の味の3要素は時期・品種・鮮度です。どんなに技術を駆使して栽培しても、旬のものには敵わない。専門のホウレン草農家が夏につくるよりも、素人が冬につくるホウレン草のほうがおいしい確率がはるかに高いのです」

 クール便による野菜の広域流通も可能になったが、香りの経時劣化が起きてしまうため、できるだけ採りたてがいい。旬に野菜を育て、おいしい品種を選び、鮮度よく届けなければ、消費者に満足してもらえないと考える久松氏は、時期ごとに旬の野菜だけをつくり、それらをセットにして直送している。

 もうひとつの生き残り戦術は、「自分たちが持っているもので最大限に戦う」という方針だ。それがコミュニケーション力であり、ITによる情報発信力だ。久松氏は2006年、自らブログを立ち上げたほか、Facebookを通じた情報発信も行ってきた。

 こうした取り組みによって小規模ながら確実に顧客からの信頼を得ている久松農園だが、農業は参入者の10年後残存率は3割といわれるほど生き残りが難しい業界だ。久松氏はサバイバーの一人として、農業への新規参入で成功するための秘訣について次のように語った。

「事業が成り立つ要素は、知識と道具と仲間。大企業はこれらをすべて持っていますが、新規参入者は何もありません。これを獲得できるまで辞めずに続けることが、成功の秘訣。勝てなくても、負けない努力が重要だと思います」

導入店舗は1800件超え、飲食店予約管理サービス「トレタ」

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トレタ
代表取締役
中村 仁氏
 飲食店予約管理サービス「トレタ」を開発した中村 仁氏は、パナソニックや外資系広告代理店を経て、2000年に飲食店を開業。とんかつ店の「豚組」や立ち飲み居酒屋の「西麻布 壌」といった繁盛店を数々生み出してきた。

 その後中村氏は2013年にトレタを設立し、飲食店予約管理アプリ「トレタ」を開発した。これまで飲食店舗を経営してきた同氏は、このサービスを開発した理由について「小さな飲食店はITを使いこなせず、このままでは個店の時代は来ないと思いました。飲食店とITの幸せな関係を築くためにトレタを開発したのです」と説明した。

 従来ほとんどの飲食店では、顧客からの予約を紙台帳で管理していた。トレタはこの紙台帳をiPadに置き換え、シンプルかつ簡単な管理を実現するものだ。

「トレタは、『銀行のATMを使える人なら誰でも利用できる』レベルのユーザビリティを目指しました。サービス開始から1年ほど経ちましたが、導入店舗は1800を超え、約80万件以上の予約データを預かっています。来店客数に換算すると、500万人超になります」

 画面を開くと「新規予約」「予約変更」という2つのメニューが現れる。お客さんから電話がくると、iPadで録音がスタートし、担当者の音声が記録される。あとは予約日時、人数、電話番号などの情報をフローに沿って入力していくだけだ。過去に予約がある場合は、その情報が表示され、来店回数も把握できる。最後にすべての手続きが終わると、確認画面が現れ、予約確定後に顧客の携帯番号にショートメッセージが自動送信される仕組みだ。

 また、トレタの機能は単なる座席の予約管理にとどまらない。ある店舗の予約が満員でも、別店舗の情報もボタン1つで分かるため、電話を切らずに姉妹店の予約を勧めることもできる。顧客属性をタグで自由に記入できるほか、画面を指でなぞるだけで手書き感覚でメモを残せる。

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トレタの予約入力の画面。電話で予約を聞きながらキーボードが打てなくても、手書きメモが取れる

「予約データはリアルタイムでクラウド上にアップされるので、紙台帳で起こりがちなオーバーブッキングなどのトラブルもありません。導入店舗のなかには、1日で1700件の予約が取れるようになった店もあります」

 中村氏は、このサービスを普及させ、飲食店のインフラにしたいと考えている。「大企業は物量作戦で攻めてくるため、小さな店は太刀打ちできません。それに対抗するには、個店が尖った面白いことをやることが重要です。そのために我々は、ITリテラシーのない多くの人が使い倒せる簡単なサービスを提供することが使命です。個店が元気になって、初めて食文化も豊かになると思います」と力説した。

【次ページ】個店・個農だからできる強いビジネスとは?

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