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- 2016/07/06 掲載
チャットボット(bot)のビジネスモデル:人工知能は「アプリ」も不要にするのか
誰でもバーチャルな秘書が利用できるチャットボット
「急な出張で航空券やホテルの手配に困る」「自分に合った美容院が見つからない」「上司への贈り物は何にしよう」そんなときに秘書がいれば助かるなと思いませんか?誰にでもバーチャルな“秘書”がつく時代が目の前に来ています。鍵を握るのはフェイスブックやLINEが導入したボット機能です。ボット「何時の飛行機がよいでしょうか」
あなた「月曜の正午までに着いて、木曜3時以降に東京に戻らないといけないんだ」
ボット「いくつかの便に空席がありますよ。3万円以下の場合、XXX便とYYY便です。予約しますか?」
あなた「予約するよ」
ボットとは、レストラン予約やカレンダーにある予定の通知など、単純な作業を自動的に実行するソフトウェアを指します。これまで人間に対して電話をかけて行ってきたような作業も、ソフトウェアによって自動的に行えるようになったため、素早く正確な新時代のカスタマーサービスとして注目されています。
ボットは、メッセージングアプリに組み込まれて提供されます。そのため、人間と会話する場合と同じ感覚で、ボットに対して話しかけられます。最近の技術開発によって、人間の自然な文章を理解し、意味の通る回答を返してくれるようになってきました。
ボットが急速に注目を集めているのは2016年4月にフェイスブックが発表したボット機能が大きく影響しています。Facebookメッセンジャー上の開発環境を用意し、どの企業でも自動的に顧客対応できるボットが提供できるようになりました。例えば、ハイヤー配送を行うUber(ウーバー)はボットを開発し「15分後に自宅へ車を回して」とメッセージを打つだけで、車を配送してくれる機能を始めています。
メッセージングアプリによる顧客サービスは、ユーザーと企業の双方にメリットがあります。まず、ユーザーは情報が氾濫するインターネット上で必要な商品・サービスを探すのに困難を覚えています。
広告で溢れるWebサイトは誰もが避ける存在です。自分の好みを理解した上で、求める情報をすぐに回答してくれる機能は大きな需要があります。また、コールセンターに電話をして「たらい回し」にされるよりは、メッセージングアプリ上で完結したサービス提供される方が都合が良いでしょう。
一方で、企業にとってはメッセージングによって顧客と親密な関係が築けます。競争が激化する多くの業界にあっては、顧客一人一人と直接関係を保ち、長期的なサービス提供を行うメリットは大きいと言えます。フェイスブックはメッセンジャーを「顧客が企業に連絡を取りたい場合に向かう場所」にしたいと述べました。世界に9億人のユーザーを抱えるFacebookメッセンジャーは、企業にとって魅力的なマーケティング・プラットフォームです。
メッセンジャーアプリがあれば何もいらない時代に?
「アプリの時代からボットの時代」への転換はすでに始まっています。企業はモバイルアプリを開発し、ユーザーの獲得を目指してきましたが、アプリ市場は既に飽和しています。300万以上のアプリがiOSとAndroid上で動いているの対し、平均的なスマートフォンユーザーは5~10個程度のアプリしか使っていません。新しくインストールするアプリは、毎月の平均で、なんと1個以下だと言われています。飽和したアプリ市場の中で、唯一成功している分野がメッセージングアプリです。Facebookメッセンジャーを始め、WhatsApp、WeChat、LINEなどが世界的に広まっており、一つ以上のメッセージングアプリを使用しているユーザーは全世界で25億人以上。モバイルOSを土俵にしたアプリの開発競争は終焉を迎え、メッセージングアプリという新たなインフラの上で動作するボットの開発競争へと舞台が移ったのです。
ボットが中心となれば、ユーザーは全ての消費行動をメッセージングアプリ内で行えます。現在のように、Webブラウザで情報を収集して、アプリをインストールして商品を検索し、支払い情報を逐一入力する必要がなくなります。チャット機能によって自然な会話を行うだけで、自分に必要な商品・サービスが提案され、購入までメッセージングアプリで行えるようになるのです。
【次ページ】ボットのプレイヤーは群雄割拠
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