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  • 2022/11/08 掲載

売上70倍・物流進出のTikTok、減収組Facebook・YouTubeとのガチ勝負の行方

連載:米国の動向から読み解くビジネス羅針盤

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今やFacebookやInstagramに次ぐ第3位のソーシャルメディアに成長したTikTok。2020年にトランプ前政権による政治的圧力などで成長の鈍化が指摘されていたが、実際はさらに成長し、2019年から2024年の間に広告収入は70倍となる見込みだ。あまりの勢いに、広告収入で苦戦が続くメタやグーグルらも警戒心をあらわにし、本気になって対抗策を打ち始めた。さらには米議会でもTikTok追放の声が上がっている。民間と政治家によるTikTok包囲網が形成され、TikTokに大きな壁が立ちはだかる。短編動画市場で何が起きているのか、探ってみたい。

執筆:在米ジャーナリスト 岩田 太郎

執筆:在米ジャーナリスト 岩田 太郎

米NBCニュースの東京総局、読売新聞の英字新聞部、日経国際ニュースセンターなどで金融・経済報道の基礎を学ぶ。現在、米国の経済を広く深く分析した記事を『週刊エコノミスト』などの紙媒体に発表する一方、『Japan In-Depth』や『ZUU Online』など多チャンネルで配信されるウェブメディアにも寄稿する。海外大物の長時間インタビューも手掛けており、金融・マクロ経済・エネルギー・企業分析などの記事執筆と翻訳が得意分野。国際政治をはじめ、子育て・教育・司法・犯罪など社会の分析も幅広く提供する。「時代の流れを一歩先取りする分析」を心掛ける。

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2019年から2024年におけるTikTokの広告収入の推移(後ほど詳しく解説します)

テック業界でTikTokが話題を独占

 世界有数のテクノロジーカンファレンスである米コードカンファレンスは、例年9月に豪華な顔ぶれが集う。そのコードカンファレンスで2022年に話題を独占したのが、中国バイトダンスが運営する動画共有アプリ「TikTok」と、短編動画の台頭であった。

 日本でも広く読まれた『THE FOUR GAFA 四騎士が創り変えた世界』の著者であり、米ニューヨーク大学スターン経営大学の経営学修士(MBA)コースでデジタルマーケティングの教鞭を執るスコット・ギャロウェイ教授は、「今年のカンファレンスの重要なテーマは2つある。1つはTikで、もう1つはTokだ」と言い切った。

 一方、同カンファレンスに参加した、グーグル親会社、アルファベットのサンダー・ピチャイCEO(最高経営責任者)は、グーグルが運営する動画投稿サイトYouTubeがTikTokの勢いに押され始めていることを念頭に、「3年前にはTikTokがここまで成長するとは、業界の誰も思わなかった」と本音を吐露した。

 事実、TikTokはユーザー数・視聴時間・広告売上において、米国の複占企業グーグルとメタのシェアを切り崩し始めている。全世界の月間アクティブユーザー数が10億人(米メタ・プラットフォームズはFacebookなどのプラットフォーム総計で30億人)を突破したとされている。そして、ユーザーは1日平均8回もアプリを開く。

 TikTokはさらに、人気の波に乗って米国でECと物流にも進出する。米ニュースサイト「アクシオス」は10月11日、EC世界最大手のアマゾンに対抗し、シアトルなどの米国内に物流・配送センターを開設する、と報じた。TikTokが擁する80万人のインフルエンサーと提携し、ライブフィードのショッピング広告で物品販売を行うサードパーティー企業に対してロジスティクスサービスを提供し、新たな収益源とする。

 一方、アマゾンのように運送分野にまで参入するかは、現時点では不明だ。なお、TikTokはすでに英国や東南アジアでECを手掛けているが、マネタイズには至っていないようだ。米国での成否に注目が集まる。

TikTokの広告売上が「たった1年で3倍」

 特に広告売上については、FacebookやInstagramらが苦戦する中、TikTokは元気が良い。


 まずFacebookとInstagramを運営するメタは10月26日に発表した2022年7~9月期決算で、売上高が前年同期比4%減、純利益は52%減となった。広告売上の低迷が響き、2四半期連続の減収になるなど低調だ。またYouTubeも2022年7~9月期の広告収入が2%減となり、YouTube広告の売上高を開示するようになってからは初めての減収となった。

 対するTikTokは、トランプ前政権が米企業によるTikTok買収を容認する大統領令を発出するなど、米国における広告収入の伸び率は限定的になると指摘されていた。しかし調査企業eMarketerの予測によると、2022年におけるTikTok全体の広告収入は前年比3倍の116億4,000万ドル(約1兆7,191億円)に達する見込み。伸び率のペースは次第に遅くなるが、2019年からの5年間で70倍の規模に成長すると見ている(図1)。

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図1:TikTokの広告売上は、2022年に前年比で3倍になるなど急増している
(出典:Oberloの資料より編集部作成)

 調査企業Insider Intelligenceの推計では、2022年の世界デジタル広告市場の半分以上はグーグルとメタが複占し、TikTokはわずか1.9%を占めるに過ぎない。それでも、ピチャイCEOが脅威を感じているように、グローバル規模に成長したTikTokは無視できない存在だ。

 また、写真共有アプリのSnapchatやInstagramなどを除き、米国発のプラットフォームでは軒並みユーザーの高齢化が進む。対してTikTokが、若年層のハートを鷲掴みにしているところも、米業界にとっては気になるところだ。

 米世論調査のPew Research Centerが2022年7月に「米国の成人は日常的にどのソーシャルメディアでニュースを見るか」について調べたところ、TwitterやFacebookが3年連続でシェアを落とした。そしてYouTubeやInstagram、Snapchatが横ばいであるのに対し、TikTokだけが右肩上がりの成長を示している(図2)。

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図2:米国の成人がどのソーシャルメディアで日常的に情報を得るかを調査。2020年から2022年にかけてTikTokだけが右肩上がりを示している
(出典:Pew Research Center

 この調査は成人に対して実施されたものだが、TikTokのユーザーがティーン層で厚いことを加味すると、米テック大手の将来的な地位はまったく保証されていないとわかる。これに危機感を感じた米国勢は、対TikTokを意識した戦略や計画を打ち出し始めている。

【次ページ】Facebook・Instagram・YouTubeの対抗策は?

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