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  • 2018/02/05

なぜ地方で公設ガソリンスタンドが「急増」しているのか?

過疎地域が直面する深刻な課題

地方自治体が運営するガソリンスタンドが増えている。公共交通機関が弱体化している過疎地域では自家用車が必需品だが、人口減少の加速で民営スタンドの経営が成り立たなくなっているからだ。全国にはスタンドが1カ所もない自治体が12町村あるうえ、1カ所だけの自治体も75町村に上る。民間スタンドの減少に歯止めがかからない一方で、今後も公設スタンドは増えそうな状況。東洋大経営学部の小嶌正稔教授(経営学)は「車が地域生活を支えるインフラである以上、公設でスタンドを維持するのはやむを得ない」とみているが、財政基盤の脆弱な過疎自治体にとって大きな負担になっている。

政治ジャーナリスト 高田 泰(たかだ たい)

政治ジャーナリスト 高田 泰(たかだ たい)

1959年、徳島県生まれ。関西学院大学社会学部卒業。地方新聞社で文化部、地方部、社会部、政経部記者、デスクを歴任したあと、編集委員を務め、吉野川第十堰問題や明石海峡大橋の開通、平成の市町村大合併、年間企画記事、こども新聞、郷土の歴史記事などを担当した。現在は政治ジャーナリストとして活動している。徳島県在住。

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奈良県川上村の国道沿いに登場した村営のガソリンスタンド。村内唯一のスタンドで、住民のライフラインを守っている(写真:筆者撮影)


村で唯一のガソリンスタンドが廃業

 西に大峰山脈、東に台高山脈。奈良県川上村は深い山に挟まれた紀ノ川(奈良県では吉野川)の源流域にある。民家や公共施設が点在するのは、川沿いのわずかな平地。井戸地区の国道169号沿いに唯一のスタンドがあったが、経営者が体調を崩して2017年春に廃業した。

 村内を走る公共交通はコミュニティバスだけ。村民の足はマイカーになるが、人口は基幹産業だった林業の低迷で約1,500人に減った。60年前の2割という深刻な状況だ。

 スタンドは車への給油だけでなく、暖房用の灯油を村内に配達してきた。村民にとってなくてはならない存在だが、廃業前には人口減少で給油客が20年前の3分の1程度の1日約50人に落ち込んでいた。

 代わりのスタンドがある隣の吉野町までは約12キロ。往復で1時間以上かかる村民もいるため、村が施設の寄付を受け、公設スタンドとして再スタートを切った。運営は村などで組織する村民支援団体「かわかみらいふ」が受け持っている。

 かわかみらいふは「村民にとってガソリンや灯油はライフライン。公設化後は厳しい経営状況を察知した村民が積極的に利用してくれ、売り上げが順調に伸びている」と目を細めていた。

中山間地を中心に全国で急増する給油所過疎地

 スタンドの減少で住民生活に支障が出るケースは、全国の過疎地で見られるようになった。経済産業省は自治体内にスタンドが3カ所以下しかないところを「給油所過疎地」と呼んでいる。

 経産省の2017年3月末現在の集計では、給油所過疎地は全国302市町村。うち、スタンドが1カ所もないのは、青森県西目屋村、和歌山県北山村など12町村に上った。1カ所だけなのが、石川県川北町、岡山県西粟倉村など75町村、2カ所は北海道陸別町、徳島県勝浦町など101町村、3カ所が岩手県平泉町、熊本県球磨村など114市町村ある。

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給油所過疎地の自治体

 人口減少に伴う需要の落ち込みで国内のスタンドは減り続けている。2017年3月末現在のスタンド数は全国で3万1,467カ所。1995年3月末の6万421カ所からほぼ半減した。同時に中山間地を中心に給油所過疎地が急増中だ。

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全国の給油所数。1995年3月末のピークからほぼ半減した

 これに2010年に施行された改正消防法が追い打ちをかけた。改正消防法では埋設から40年以上経過したタンクに漏えい防止対策を義務づけている。工事には2,000万円近い費用が必要なことから、自主廃業を選ぶ業者が相次いでいるわけだ。

 経産省が給油所過疎地にあるスタンド1,041店から2017年1~2月に回答を得たアンケート調査では、「事業を継続する」との回答が72%ある一方で、「未定」が19%、「廃業を考えている」が9%に上った。事業継続の見通しを立てられないスタンドが、全体の3割近くを占めている。

 このため、経産省はスタンドの集約や移転など具体的な対策を地域ごとに指南する取り組みをスタートさせた。経産省石油流通課は「地域の事情に合わせたスタンド維持対策を支援していきたい」としている。

【次ページ】北海道や和歌山県でも公設スタンドが誕生

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