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  • 2019/03/11 掲載

ヤッホーブルーイング 木村壮氏に聞く、「超絶顧客目線」のIT部門を作るには

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「よなよなエール」などの独自製造のクラフトビールで、大手酒造メーカーの寡占状態だったビール業界に風穴を開けたヤッホーブルーイング。長野県軽井沢町に本社を構える同社は、小規模な地方企業ながら、独自の製品作りとユニークなプロモーションでファンを増やし続けている。そんな同社の急成長を支えるIT施策について、IT部門の責任者を務める木村壮氏に話を聞いた。

聞き手・構成:ビジネス+IT編集部 山田竜司

聞き手・構成:ビジネス+IT編集部 山田竜司

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ヤッホーブルーイング 情報システムユニット ディレクター 木村 壮 氏はどのように仕事に取り組んでいるのか

ビール業界に新風をもたらしたヤッホーブルーイング

──まずは、ヤッホーブルーイングの事業内容について教えてください。

木村氏:ヤッホーブルーイングは、小規模なビール醸造所で生産する「クラフトビール」を製造しているメーカーです。

 日本国内のビール市場では、大手メーカー4社がほとんどのシェアを持ち、その商品の大部分はラガービールで占められています。それに対して弊社ではエールビールを独自製造して、一定数のお客さまから支持をいただいています。

 また単に製品を製造・販売するだけでなく、お客さまとの触れ合いを重視しています。「宴」と名付けた社員とファンとの交流イベントがその代表例です。

 当初40人程度の会が、2018年開催の「よなよなエールの超宴」では5000人の規模になりました。自社の事業を単なるビール製造業ではなく「ビール製造サービス業」と定義し、ファンやお客さまとクラフトビールを楽しむ文化を大切にしています。

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ファンイベント「超宴」は5000人規模まで成長した
(出典:ヤッホーブルーイングWebサイト)

「フラットなIT部門」を実現する組織体制とは

──木村さんが率いる情報システムユニットの役割や規模について教えてください。

木村氏:弊社の組織はピラミッド型ではなく、18の組織がフラットに並ぶフラットユニット制度を採用しています。そのユニットのうちの1つが情報システムユニットで、他の17のユニットとさまざまな調整を行いながら、ITに関する事業側の要請に応えています。

 IT部門としてフラットに事業の話ができる組織体制なので、さまざまな取り組みを試しやすいと感じています。

 ミッションとしては大きく「攻めのIT」と「守りのIT」に分かれています。前者についてはITを使ったイノベーションや、収益に直結するシステム施策を、そして後者についてはインフラの安定運用や生産性向上のためのIT活用などに日々取り組んでいます。メンバーは、私も含めて4人です。

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ヤッホーブルーイング 18の組織がフラットに並ぶ「フラットユニット制度」

「スピード感」に応えるIT戦略

──貴社のIT戦略に関する基本方針を教えてください。

木村氏:現在は「クラウド・ファースト」と「マイクロサービス化」という2つの方向性を掲げています。

 われわれのビジネスのスピード感は非常に速く、またIT技術の進化も日進月歩です。システムを一から自社開発していてはビジネスやテクノロジーのスピードに付いていけないと考え、SaaS型のクラウドサービスを積極的に活用し、自社ではインフラを所持しないクラウド・ファーストの方針を打ち出しています。

 またシステムのアーキテクチャに関しても、戦略や市況に応じて柔軟に対応できるように大型のシステムを構築するのではなく、業務機能に対応したシステムを個別に構築して組み合わせていくマイクロサービス方式を採用しています。

──インフラよりアプリケーションやデータに対する投資を重視しようというお考えですね。

木村氏:はい。IT資産というと、昔はシステムそのものを指すことが多かったのですが、現在では「データこそが資産」という考えに変わってきているのではないでしょうか。弊社でも社内に散在していたデータの活用を進めています。

 たとえば、顧客の購買履歴や行動履歴のデータを顧客対応やマーケティング施策に活用し始めたのもその一例です。 弊社では通信販売やイベント開催など、お客さまとさまざまなタッチポイントがありますが、このポイントごとでわかったお客さまの情報は、各組織が保持しており、部署横断での活用ができていませんでした。

 これでは、お客さまから「ヤッホーブルーイングからの対応にバラツキがある」ように見えてしまいます。お客さま一人ひとりの情報を社内で一元管理し、どのタッチポイントでも高い応対品質を提供できるように改善を図っているところです。

 これは、IT部門とマーケティング部門が密接に連携し、同じ目線で話ができるような関係性を作ることで実現しています。たとえば、顧客が商品やサービスを知り、最終的に購買するまでの「カスタマージャーニー」はマーケティング部門、「技術のトレンド」「個人情報の取り扱い」についてはIT部門が主導で検討をしています。

 両部門が、「ビジネスとしてどうありたいのか?」という目線を合わせることで、それぞれの強みを活かしながら推進できます。

 IT部門はどうしても手段であるITの目線で物事を考えてしまいがちです。常にビジネス全体の視点に立って、「これはそもそも何をやりたいんだっけ?」と自問自答しながら仕事に臨むよう心掛けています。

【次ページ】「技術ありき」ではないビジネス全体に寄与するIT施策の提案を

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