- 2022/11/29 掲載
原発活用へ現実的対応=上限撤廃は見送り、世論反発を懸念
経済産業省は28日、既存原発の運転延長に向けた制度改正案をまとめた。「原則40年、最長60年」とする現行ルールを基本に、安全審査などによる停止期間を除外する。上限撤廃案も検討されたが、世論の反発を懸念して見送った。現実的な対応に落ち着いた格好だが、原発の長期運転には設備の経年劣化など安全性の不安がなお残る。
東京電力福島第1原発事故後に厳格化された新規制基準の下で再稼働した原発は10基にとどまり、残り17基は停止期間が長期化。安全対策費も膨らみ、東電柏崎刈羽原発(新潟県)では1兆円を超えた。経産省は、再稼働後も残余の運転期間が短いと、電力会社が費やした巨額投資の費用対効果が失われると危惧していた。
また、建設中を含む36基全てが60年運転しても、2060年に稼働する原発は8基に減少する。今後、新増設や建て替えを決めても実現には長い年月がかかる。電力の安定供給と脱炭素化推進には既存原発の最大限の活用が必要と判断した。
政府・与党内には、運転期間の上限撤廃を求める声も強かった。ただ、東電福島原発事故後に導入された現行ルールを撤廃すれば、世論の強い反発を招く可能性がある。40年超運転が認められた原発が複数立地する福井県の杉本達治知事も「誰しも古い炉をいつまでも動かすことに漠然と不安を持つ」と懸念を表明していた。運転期間の上限を維持することで、経産省は安全性を高めた次世代型原発への移行を促せるとみている。
停止期間中は放射線による原子炉の損傷はほぼないとされるが、コンクリートや配線などは経年劣化が進む。このため原子力規制委員会は、60年超運転を想定した安全審査の在り方を検討。所管する原子炉等規制法を改正し、運転開始から30年以降は10年以内ごとに審査する新規制を盛り込む方針だ。山中伸介委員長は「現行制度よりもはるかに厳しい規制だ」と強調している。
【時事通信社】
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