• 2022/12/08 掲載

焦点:弱まるドル/円の反発力、米利上げ減速観測 日銀巡る思惑も

ロイター

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坂口茉莉子

[東京 8日 ロイター] - ドル/円の反発力が鈍ってきた。米利上げペース鈍化の観測に加え、日銀の政策修正を巡る思惑も上値を重くしている。日本の貿易赤字などファンダメンタルズの円安要因は残っているものの、32年ぶりのドル高/円安水準を付けたトレンドは転換した可能性があるとの見方が市場では多い。

<6年半ぶりの下落幅>

「急激」な下落となった。11月、ドル/円の下落幅は11円超と2016年6月以来の大きさ。12月に入っても下げ止まらず、2日には133.62円と、10月21日に付けた1990年以来の高値151.94円から約12%の下落となった。

最大の要因は、米利上げペースの鈍化観測だ。政府・日銀が2カ月間で約9兆円の円買い介入を行った効果もあるが、米インフレのピークアウト観測が強まる中、米連邦準備理事会(FRB)の利上げペースが落ちるとの見方がドル/円を押し下げた。

インフレの高止まりにより、FRBのターミナルレート(政策金利の最終到達点)は一段と引き上げられる可能性はある。CMEグループのフェドウオッチでは、現在の3.75─4.00%から来年5月までに5.00─5.25%に引き上られるとの予想になっている。

しかし、みずほ銀行のチーフマーケットストラテジスト、鈴木健吾氏はターミナルレートが5.5%に上振れたとしても、「景気減速懸念や米利下げに転じる時期が視野に入る中、ドルが10月に付けた高値を上抜けるような状況ではない」とみる。

ステート・ストリート銀行の東京支店・共同支店長、若林徳広氏も、ドル高の背景には世界的な金融引き締めと地政学リスクを背景にリスクオフ地合いがあったとし、「(一方向に傾いてた)ポジションの巻き戻しとリスクセンチメントの回復で相場の雰囲気が変わった」と指摘する。

<日銀政策修正観測が再燃>

日銀の政策修正観測が市場の一部で強まっていることも円高要因だ。11月25日に発表された11月の東京都区部消費者物価指数(CPI)では、生鮮食品およびエネルギーを除くコアコア指数が前年比2.5%上昇と2%を突破。1992年10月以来の伸びとなり、政策修正観測が再び盛り上がるきっかけとなった。

こうした中では、要人発言も円高材料にされやすい。日銀の田村直樹審議委員が金融政策の枠組みや物価目標を点検・検証を行うことが適当と見方を示したことが話題となり、海外勢が円売りポジションを縮小させる動きが強まったとみられている。

黒田東彦総裁が6日、金融政策の枠組みを具体的に論じるのは時期尚早だと述べたほか、中村豊明審議委員も7日午前、「金融緩和を粘り強く続ける必要がある」と述べるなど政策修正に否定的な見解を示しているが、来年4月の総裁任期に向け、思惑がくすぶり続ける可能性がある。

あおぞら銀行のチーフマーケットストラテジスト、諸我晃氏は「来年にかけてはイールドカーブ・コントロール(YCC)の政策修正がテーマとなり、円の買い材料となりやすい。米長期金利が低下傾向にあれば円金利の上昇圧力を抑制するため、YCC政策を修正しやすい環境になる」との見方を示している。

<貿易赤字など円安要因は継続>

ただ、ドル高/円安トレンドが転換したとしても、「急激」な円高傾向が続くとの見方は少ない。ファンダメンタルズ的な円安要因がまだ残っているためだ。

一つは日本の貿易赤字だ。10月の貿易赤字は2兆1623億円と、事前予想の1兆6100億円を大きく上回った。石油価格は下落しているが、世界的な景気減速が強まれば輸出を圧迫しかねず、貿易赤字は縮小しにくくなる。

石油市場では、欧州連合(EU)によるロシア産原油輸入の原則禁止などで供給量が減少する一方、中国のゼロコロナ政策の緩和が進み経済再開となれば需給が引き締まる可能性がある。ニッセイ基礎研究所の上席エコノミスト、上野剛志氏は、エネルギー資源の輸入依存度が高い日本では「実需の円売りは恒常的に出て、円高ペースを抑制する」とみる。

地政学リスクもドル高要因だ。クレディ・アグリコル銀行の資本市場本部シニア・アドバイザー、斎藤裕司氏は「中国に投資をしている海外勢の資金が流出する可能性があり、長期的な資金がアジアに入りにくくなる」と指摘。地政学リスクが一段と高まれば「円買いよりもドル買いの方が選好されやすい」との見方を示す。

ドル/円は足元で136円台まで持ち直している。テクニカル的には、一目均衡表の週足の基準線や転換線が集中する141─143円付近が上値抵抗線になる一方、134円後半にある200日移動平均線を下抜けた場合は、12カ月線の132円、52週移動平均線の130円前半が下値サポートになるとみられている。

(坂口茉莉子 編集:伊賀大記)

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