- 2022/12/11 掲載
アングル:米衣料大手にコロナ後遺症、季節外商品投げ売り
しかし、エリエス・チャパロさん(30)のようにインフレに疲れ切っている買い物客は、季節外れの衣料品の大幅な値引きに何の魅力も感じていない。
チャパロさんがノースカロライナ州ローリーのモールを訪れたのは値引き対象の冬用コートを買うため。だが、ギャップのクリアランスコーナーにあったのは、デニムのショートパンツやパターン柄のクロップトップなど価格が15.99ドル以下の春物と夏物の商品ばかりで、気持ちが動かない。
ラックに掛かっているピンクの半袖ブラウスは「生地の様子から、しばらく棚ざらしになっていたみたい」だという。
エクスプレスやギャップなど衣料小売り大手は昨年の年末商戦から型落ち商品を持ち続け、この秋の販売に期待を掛けている。
スモール・キャップ・コンシューマー・リサーチのエリック・ベダー最高経営責任者(CEO)は「価格を十分に下げれば処分可能」と見る。
しかし、衣料小売り業者にとって、重要な年末商戦の利幅やファッション流行の発信地となるための取り組みに傷が付きかねない。
ジェーン・ヘイル・アンド・アソシエーツのアナリストのジェシカ・ラミレス氏は、頻繁に店舗を訪れて店内をチェックする。だが、ギャップでは数週間前からラックに夏服が置かれているのを目にした。衣料品の需要が落ち込んでいる今、業者が過去のシーズンの商品を陳列するのは利益率と集客の両面にとって「良い兆候ではない」と指摘する。
「買い物客は今着るために買うのだから、顧客がすぐに欲しい、必要な商品を用意することが重要だ」と言う。
ギャップはコメントを避けた。エクスプレスの広報担当者は、コメント要請に応じなかった。
需要の落ち込みは年間を通じて業者を圧迫、在庫を押し上げており、ギャップ、ビクトリアズ・シークレット、コールズなどは値下げを余儀なくされている。
昨年の年末商戦に商品の入荷が遅過ぎたため、衣料小売り業者も今年はサプライチェーン(供給網)の混乱を避けるため、季節物商品の発注を早めた。しかし、顧客はガソリンや食料品の値上がりで懐が苦しくなって需要が落ち込み、業者は苦境に立たされた。
エクスプレスは年末商戦の売れ残り商品を投入したことで在庫が第1・四半期(2─4月)に前年比40%増加し、第2・四半期も29.9%増えた。
エクスプレスは6日にオンラインと一部店舗で年末セールを展開、全商品を30─50%値下げしたほか、キャミトップやアニマルプリントのマキシドレスなどクリアランス商品はさらに50%値引きした。
ジェーン・ヘイル・アンド・アソシエーツの調査によると、10月から感謝祭の週末にかけて、衣料小売りなどで割引の頻度と程度が大きくなった。昨年よりも早い時期に、より大きな販促を開始したところもあった。
セールスフォースのデータでは、感謝祭からサイバーマンデーの期間に最も値引きが大きかったのが一般衣料品で、平均値引き率は約34%だった。
<利幅は縮小>
ギャップは11月にも夏物商品の秋への持ち越しで「利幅が悪化」すると投資家に警告したが、店舗をチェックしたところ現在でもそうした商品の一部が棚に残っているようだ。同社のオンライン販売は6日、ベーシックアイテムであるクルーネックTシャツを60%引きで販売した。
カトリーナ・オコネル最高財務責任者(CFO)は11月中旬、価格を下げる必要があるとしても、在庫を減らして2023年を迎えられる見込みだと述べた。売れ残り在庫を抱え続けるのは、短期的に「現金を消費する」ことであり、新年までに型落ち商品を整理することに集中するという。
確かに年明けまでに型落ちを処分すれば、ギャップやエクスプレスは買い物客が喜んで買うような流行商品のためにスペースを空けることができるし、商品の保管コストも圧縮できる。
ただ、ギャップは値引きの影響で第3・四半期(8―10月)の利益率が前年同期の41.9%から38.7%に低下。市場では年末商戦期を含む第4・四半期は34.61%と、昨年の33.66%から改善すると予想されている。
リフィニティブがまとめたアナリスト予想によると、エクスプレスは第3・四半期の利益率が前年同期の33.22%から29.7%に低下する見込みだ。
(Arriana McLymore記者)
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