• 2023/02/08 掲載

ついえた「日の丸ジェット」=露呈したノウハウ不足

時事通信社

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三菱重工業が国産小型ジェット旅客機「スペースジェット」からの撤退を決め、2008年に始まった「日の丸ジェット」の開発構想はついえた。航空機事業は品質管理や安全性の要求水準が厳しく、初期投資もかさむことから事業化のハードルが高い。三菱重工は航空部品の分野では豊富な実績を持つが、完成機の組み立てではノウハウ不足が露呈した。

「『技術』を『事業』にするところの十分な準備や知見が足りなかった」。三菱重工の泉沢清次社長は7日の記者会見で、「スペースジェット」の敗因をこう語った。「一定の水準の機体を開発できた」といい、技術面での成果があったことも強調。しかし、運航に必要な型式証明の取得手続きに関する理解や経験が不足し、子会社の三菱航空機は商用化にこぎ着けることができなかった。

型式証明の取得にこだわれば、今後数年にわたり年1000億円前後の出費が必要になる可能性があった。一時は国内外の航空会社から427機の受注を集めたが、開発に手間取る間に失速。また、米ボーイングなどの海外大手と比べ、新規参入の三菱重工は航空事業の規模が小さい。海外企業から装備品を調達する際の交渉力が弱く、有利な条件を引き出すことが難しかった。

日本はかつて零式艦上戦闘機(ゼロ戦)に代表される世界最高水準の航空技術を誇っていたが、敗戦後は連合国軍総司令部(GHQ)に製造を禁じられて衰退。1960年代には国家プロジェクトでプロペラ旅客機「YS11」を生み出したが、採算を確保できずに姿を消した。実現すれば約半世紀ぶりの国産旅客機となるスペースジェットは、日本の航空産業復活の象徴になるはずだった。

航空機は100万点もの部品を使うため産業の裾野が広く、経済への波及効果も大きい。日本は主要国と比べて航空産業の規模が小さく、成長性に対する官民の期待は高かった。西村康稔経済産業相は7日、記者団に対し「当初の目的を達成できなかったことは極めて残念であり、重く受け止めている」と語った。

【時事通信社】 〔写真説明〕滑走試験を行う三菱航空機の「スペースジェット」=2019年12月、米ワシントン州モーゼスレイク

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