- 2023/02/23 掲載
アングル:インフレ下の米国値上げ合戦、ブランドが勝利の決め手
消費財メーカーの価格戦略は、ウォールマートなど追加値上げに抵抗する小売り業者との力関係や、消費者からの需要の強さ、材料の調達状況などに左右される。
新型コロナウイルス流行による供給網の混乱や政府の景気刺激策、ウクライナ戦争などが引き起こした「1世代に1度」級のインフレで、顧客の懐具合は世界的に厳しくなった。
英国の消費者が1月22日までの1カ月間に食品に使った金額は、前年同月比で16.7%増加。米国は1月までの1年間に自宅の食事と外食の価格が10.1%上昇した。
しかし、米国で昨年12月の消費者物価指数(CPI)の前月比上昇率が2年半ぶりの水準に低下するなど、上昇率は鈍化傾向を示している。
KPMGのコンサルタント、スンダー・ラマクリシュナン氏によると「潮目が少し変わって」、一部の小売業者から値下げを求められるようになったこともあり、メーカーは判断を迫られている。
メーカーが値下げに合意すれば、小売り業者は販売価格を引き下げるが「これはかなり最近の現象で、値下げに自発的に応じるメーカーはそう多くはない」という。
ロイターの先週の報道によると、段ボール箱のコストは最大50%低下し、輸送コストも25─30%下がった。一方で、企業幹部によると、家庭用品で使われるプラスチックや化学製品の一部はコストが上がり、人件費も高止まりしている。
<異なる予想>
米食品大手のクラフト・ハインツなど1年余りにわたり値上げしてきた一部消費財メーカーは、消費者の需要をにらみ、値上げを一時的に止めている。
ミゲル・パトリシオ最高経営責任者(CEO)は先週、プライベートブランド(PB)やストアブランド(SB)が市場シェアを伸ばしていると危機感を示した。
調査会社・ニューメレーターのデータによると、食料品やベビー用品などSBの販売が増えている品目では、「ブランド」製品の値上げに伴うリスクが高い。
一方で、スイスの食品大手・ネスレのように、高い人件費や燃料費によって圧迫された利幅を取り戻すため、追加値上げを計画している企業もある。
コンサルティング会社、マジッドのマーク・ホスベイン氏は、消費者にとって価格は品質と並んで常に大きな要素だったが、今ではその重要性が一段と高まっていると指摘する。同社のデータによると、消費者は食料品、家賃、ガソリンへの支出が劇的に増え、節約や外食の抑制を迫られている。
「消費者の価格に対する感応度は、この数カ月でみても上がっている」状況で、顧客はえり好みせず、安い商品を買うようになりつつあるという。
<わが道行く有力ブランド>
ラマクリシュナン氏によると、小売業者や消費者からその市場で「中核的」あるいは「非常に強力」と見なされているブランドは、小売店網の売上拡大に貢献することから、より大きな価格決定力を持っている。
例えば、米飲料大手コカ・コーラのジェームズ・クインシーCEOは14日、同社の主力商品であるコーラとファンタは清涼飲料市場をリードしており、消費者に価格を転嫁する資格を得たと言い切った。
米日用品大手、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)の幹部は、今後数四半期にわたり米国の「消費者がよく持ちこたえてくれる」と確信しており、さらなる値上げを計画していると述べた。
バーンスタイン社のアナリストのブルーノ・モンテイン氏は「小売業者にとって、その企業が重要なブランドを持っていれば、(中略)実質的には値下げが不可能だ」と、価格戦略におけるブランド力の重要性を指摘した。
(Jessica DiNapoli記者)
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