- 2023/02/28 掲載
焦点:米高格付け企業が転換社債発行、非常に割安な調達コストに魅力
投資適格級の格付けを得ている企業は従来、転換社債を敬遠していた。市場実勢に比べて低い価格で株式を供給し、株価を押し下げるリスクが嫌気されるからだ。信用力を備えた企業の場合、投資適格級社債の発行市場においてより低いコストで資金を確保できていたという面もある。
ところがここ数週間だけでも、PPLコーポレーションとサザン・カンパニーという高格付けの米電力2社が、転換社債発行を通じて合計で24億ドルを調達した。投資適格級の電力会社が転換社債市場で起債したのは20年ぶり。調達コストは、通常の社債よりずっと低い水準に抑えることができた。
年初来で見ても、投資適格級企業の起債で転換社債発行規模が85億ドルまで増えている。このままのペースなら年間650億-700億ドルと2022年の2倍以上に達し、数年ぶりの高水準になる、とある銀行関係者は驚く。
ウェルズ・ファーゴの株式資本市場共同責任者クレイグ・マクラッケン氏は、転換社債に関心を寄せる投資適格級企業は増えつつあり、転換社債発行市場にとって今年は「ブレーク」の1年になるのはほぼ間違いないとの見方を示した。
<幾つもの追い風>
2人の銀行関係者と1人の投資家に取材したところ、米連邦準備理事会(FRB)の金融政策を巡る不透明感が原因で、一部の投資適格級企業には転換社債が魅力ある資金調達手段の1つになっているという。
さらに22年の会計ルール変更で企業の転換社債発行コストが低下したことや、転換社債投資ファンドからの着実な需要も追い風とみられる。
会計事務所エクイティ・メソッドのマネジングディレクター、ジョシュ・シェーファー氏は「転換社債は目下、高格付け発行体と高利回り債発行体のどちらにとっても一番割安な調達手段だ」と指摘した。
<ディフェンシブ銘柄に恩恵>
転換社債は債券と株式のハイブリッド証券。通常の社債と同じく利払いを実行するし、価格と利回りは金利情勢に応じて変動する。しかし株式転換権付きなので、その価格は当該企業の株価にも左右される。こうした特性がリスクを抑えることも、逆に高めることもある。
例えば投資家は今週、PPLの転換社債を額面価格(100)で購入し、24日には取引価格が101に上がった。同債を買ったウェルズリー・アセット・マネジメントのポートフォリオマネジャー、ハワード・ニードル氏によると、投資家はPPLの株価上昇を期待しているという。
足元のPPL株価は、10月の直近安値を19%上回っている。
PPLのような公益企業などのいわゆるディフェンシブ銘柄は、金利が上昇し続ける限りプラスの影響を受ける可能性があるため、転換社債で投資家が得られるリターンも膨らんでもおかしくない。
一方、株価が金利上昇で苦境にある他のセクターの投資適格級企業は、投資家がさほど魅力を感じないので、転換社債発行を選択しない公算が大きい。
今回PPLは期間5年の転換社債を発行して9億ドルを調達。表面利率は2.875%だった。サザン・カンパニーの転換社債は期間が2.75年で表面利率は3.875%。いずれも投資適格級社債の平均利回りを大幅に下回っている。
(Shankar Ramakrishnan記者)
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