- 2023/04/06 掲載
アングル:ウォール街の雇用環境に逆風、銀行危機が追い打ち
報酬コンサルタントのアラン・ジョンソン氏は「悲惨な状況とは言えないが、金融機関は過去数年の行き過ぎを是正しており、人員がやや過剰だと感じている」と指摘。
金融機関は今後の米経済の見通しに慎重な見方を強めている。金利上昇に伴う住宅ローンの需要低迷で住宅市場は減速。延滞率は歴史的な基準で見ればまだ低いが、クレジットカードや自動車ローンの延滞は増え始めている。景気減速は証券発行やM&Aの減少につながる。
ニューヨーク州で金融機関の会計検査を担当するラフル・ジェーン氏は、信用収縮が起き、証券発行やM&Aに悪影響が出れば、金融機関がさらに圧迫されると指摘。今年の賞与は横ばいから15%減となるとの見方を示した。
同州会計検査院が公表した報告書によると、ニューヨークの証券業界で働く従業員が受け取った昨年分の賞与は平均で17万6700ドル。記録的な高水準だった前年の24万0400ドルから26%減った。
前出のジョンソン氏によると、米国内のインベストメンバンカーの賞与は前年比で約30─50%減少。商業銀行の従業員の賞与は約20%減だった。トレーダーの賞与は、市場のボラティリティーを受けて昨年は取引が活況だったため小幅に増加したケースがあったという。
業界では、報酬だけでなく雇用の削減に対する懸念も浮上している。ゴールドマン・サックス・グループは先月の銀行危機に先立ち3000人以上を解雇。モルガン・スタンレーも約1600人を削減した。
関係筋によると、ゴールドマンは新型コロナウイルス流行で中断していた年次のパフォーマンスレビューを再開。この手続きの一環では通常、成績が悪い下位5%前後の従業員が解雇される。
関係筋は、BNYメロンやHSBCなど他の金融機関も人員削減を進めていると指摘。ジョンソン氏によると、退職者の補充を見送るケースが多い。
人材紹介コンサルタント会社ページグループの幹部によると、銀行・金融サービス業界で働く人員は第1・四半期に前年同期比5─10%減少した。
銀行は今年の報酬について「極めて」慎重で、新規株式公開(IPO)やM&Aなど業績が特に低迷している部門で報酬を減らしており、ヘッジファンド、プライベートエクイティ、フィンテック企業などが銀行から人材を獲得しているという。
(Tatiana Bautzer記者)
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