- 2023/04/17 掲載
アングル:一般消費財企業の業績発表、米経済の耐久力占う手掛かりに
過去1年を振り返ると、金利上昇によって住宅ローンの返済負担からクレジットカードの借り入れコストまでが増大したにもかかわらず、消費者の支出はおおむね堅調を維持してきた。しかし第1・四半期になって幅広いハイテク企業で高所得の従業員がレイオフされた上に、地方銀行を巡る危機で家計向けの与信が縮小し、娯楽や飲食、自動車、宿泊といった分野の消費が先行き圧迫されかねない事態となっている。
ナティクシス・インベストメント・マネジャーズ・ソリューションズのポートフォリオ・ストラテジスト、ギャレット・メルソン氏は「米経済を巡ってハードランディング説とソフトランディング説がせめぎ合う状況に置かれているのがわれわれだ。だが消費にある程度強さが見えれば、最悪シナリオは現実化しないという主張の正当性を高めてくれる可能性がある」と述べた。
メルソン氏自身は、住宅市場の回復を見越して住宅建設と家電メーカーに対して強気姿勢を示している。
足元では金融引き締めや、3月の銀行セクターの混乱が経済成長全体に及ぼす影響を投資家が探っている最中だけに、とりわけ企業業績と業績見通しは重要性を帯びる。
決算発表シーズンの幕開けは、JPモルガン・チェースやシティグループ、ウェルズ・ファーゴといった大手銀行が市場予想よりも好調な結果を残す展開。これに続き、17日の週にはテスラ、ネットフリックス、オートネーションなどが、27日にはアマゾン・ドット・コムがそれぞれ一般消費財セクターの主要銘柄として第1・四半期業績を発表する。
メルソン氏によると、景気後退(リセッション)懸念を背景にして既に多くの一般消費財企業は経費を圧縮して利益率を引き上げる取り組みを進めており、これによって第1・四半期利益は上振れ方向のサプライズが期待できるかもしれない。
もっとも現時点でも、リフィニティブのデータに基づく一般消費財セクターの第1・四半期利益見通しは前年同期比36.5%増と、全てのセクターで一番高い。S&P総合500種企業全体の利益は5.2%減と見込まれている。
ハリス・ファイナンシャル・グループのマネジングパートナー、ジェイミー・コックス氏は、こうした予想の一因として依然として、しっかりしている雇用市場が消費を支えている構図を挙げる。「消費者はなお旅行し、高額商品にお金を使っており、人々は贅沢な生活を続けている」という。
一般消費財セクターの株価は年初来で約14%上昇し、S&P総合500種の上昇率およそ8%をアウトパフォームしている。特に同セクターにおいて40%近いウエートを占めるテスラとアマゾンの株価上昇率は約50%、約22%弱となっている。
同時にリッパーのデータを見ると、一般消費財セレクトSPDR上場投資信託(ETF)には過去6週中5週で資金が流入し、純流入総額は2億2910万ドルと6週間ベースでは昨年8月以来の大きさを記録した。
ただ一部の投資家は、とりわけ3月の地銀危機によって今後融資が急激に縮小する恐れがある点を踏まえると、一般消費財セクターに対する見通しが楽観的過ぎると考えている。
チャールズ・シュワブのシニア投資ストラテジスト、ケビン・ゴードン氏は「消費者は永久的に強さを維持するとの見方があるゆえに、大きな楽観論がこのセクターに植え付けられていると思う。しかしそれは過去1カ月半に起きた現象を無視しているのだ」と警鐘を鳴らした。
そうした中でビレール・アンド・コーのポートフォリオマネジャー、サンディ・ビレール氏は、年内にリセッションが到来するのを想定し、一般消費財銘柄投資の選別に乗り出した。
ビレール氏は、シーザーズ・エンターテインメントやスイスのランニングシューズブランド企業オン・ホールディングといった銘柄には強気を維持しつつ、一般消費財セクター向けに配分する資金は圧縮している。小売企業については、リセッションで打撃を受けた後、割安化した段階で押し目買いに動くつもりだとしている。
(David Randall記者)
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