- 2023/04/20 掲載
アングル:ファーストリテ株価に一喜一憂、日経平均の「キャップ」接触で
<2463億円の売り試算も>
「キャップを超えた」──。好決算を発表した翌日の14日、ファーストリテの株価は前日比2570円(8.4%)高の3万2840円と大幅高となったが、大引け後の株式市場では、一転して懸念が広がった。大引け時点で日経平均に占める同社株のウエートが11.72%と11%を超えたためだ。
日経平均株価を管理する日本経済新聞社は昨年10月の定期見直しの際、特定の銘柄の値動きに過度に影響を受けるのを避けるためにウエートへのキャップを導入した。12%から開始し、毎年1%ずつ水準を引き下げ、2年かけて最終的な上限を10%とする。今年10月の定期見直しの対象は11%超の銘柄で、基準日は7月末となる。
ファーストリテのウエートが7月末時点で11%を上回っていれば、キャップ調整でウエートが引き下げられる。ウエートが引き下げられれば、日経平均指数をベンチマークとするパッシブ連動資金ではリバランスの売りが発生することになる。
フィリップ証券の増沢丈彦・株式部トレーディング・ヘッドの試算では、14日終値をベースにするとファーストリテ株へのインパクトは2463億円の売り需要になる。ウエート計算の対象は7月末時点の株価であり、まだ時間はあるものの、今後も同社株のウエートが11%以上になるほどの株高が続けば、将来の売りが懸念されることになりそうだ。
<歪み修正と継続性のバランス>
ウエートキャップによる調整について、市場では「歪みの緩和にある程度つながる」(国内証券のストラテジスト)と好意的な見方は多い。ただ、ファーストリテのウエートが調整されたとしても、現状のルールでは調整されるのは10%までであり、同社株が日経平均を左右するという状況は変わらないとみられている。
TOPIXではウエートがもっとも高いトヨタ自動車で3%台程度。ファーストリテの日経平均でのウエートが10%に低下したとしても「歪みが解消されるとはいいにくい」とニッセイ基礎研究所・金融研究部の森下千鶴氏は指摘する。
14日のケースでは、ファーストリテは日経平均を261円押し上げ、日経平均の上昇幅336.5円の77.5%を占めた。ウエートが11.72%から10%に引き下げられた場合、押し上げ幅は縮小するが、依然として影響度は大きいとみられている。
この点について日経新聞社は「構成銘柄の成長性などを十分に反映しつつ、指標性を維持できる水準として検討を重ねた結果」との見解を昨年5月に公表。投資信託協会が定めた「信用リスク集中回避のための投資制限」で上限が10%となっていることや、ウエートキャップを導入している各国の主要指数の上限数値などを参考にしたという。
実際、ウエートを大きく引き下げればいいというわけではない。日経平均は多くの市場関係者から参照される重要指標でもある。ウエートを大きく変更すれば、過去との連続性が失われ、投資家が重視する「トラックレコード」が歪んでしまうおそれがある。この問題には「過去からの継続性とのバランスを取る難しさがある」(森下氏)といえる。
(平田紀之 編集:伊賀大記)
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