• 2023/04/21 掲載

焦点:中国で景気回復下のデフレ、債務膨張で緩和効果は限定的

ロイター

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[北京 19日 ロイター] - 中国人民銀行(中央銀行)には、金融緩和に動くべき理由が数多くある。中国経済の深い部分までデフレーション圧力が浸透してきているからだ。ただ、既に融資が記録的な伸びとなっている以上、緩和の効果は限られてしまう公算が大きい。

新型コロナウイルスのパンデミックに起因した昨年の落ち込みから、景気回復の勢いは今年第1・四半期に強まった。とはいえ、明るい指標の裏側には、家計と外需の基調的な弱さが隠されている。

BBVAリサーチのシニアエコノミスト、ジニュエ・ドン氏は「中国は『変則的な』デフレのサイクルに入りつつある。つまり景気回復の中でのデフレだ」と述べた。

実際、成長率が上振れているにもかかわらず、消費者物価指数(CPI)の上昇率は急速に鈍化し、生産者物価指数(PPI)に至っては一本調子で低下。人民銀行に対する利下げ、ないしは金融システムへの流動性供給拡大のプレッシャーが一段と強まっている。

ところが、アナリストや政府系シンクタンクによると、金融緩和を実行してもメリットは乏しい。

その理由として、構造的な需要制約の存在と、既に債務規模が国内総生産(GDP)の約3倍に達する中国経済の資金調達リスクを逆に助長してしまう点が挙げられる。

人民銀行は今年3月、預金準備率を今年になって初めて引き下げた。今後も追加措置が講じられるにしても、大規模な緩和は当面期待できない。

政府系の中国政策科学研究会のシュー・ホンカイ氏は「政策金利や準備率の下げ余地は残っている。だが、その効果を過大視してはならない。流動性は十分だが需要が上向いてこないのだから、より多くの資金を供給しても役に立たない」と説明した。

中国では何十年間も、家計消費の伸びが投資や製造業活動の拡大ペースに届いておらず、多くのエコノミストは中国経済に内在する構造的な弱点だと警鐘を鳴らしてきた。この傾向が持続的に変化する兆候は、ほとんど見当たらない。

3月の小売売上高は、鉱工業生産を上回る伸びだった。ただ、これは基調的な消費需要が反映されたわけではなく、新型コロナウイルス感染対策による行動制限が消費に大打撃を与えた昨年と比べた、いわゆる「ベース効果」の結果だ。

ナティクシスのアジア太平洋チーフエコノミスト、アリシア・ガルシア・エレロ氏は「小売売上高の10%増は素晴らしく見えるが、ベース効果が大きいので、実際にはそれほど目を見張る数字ではない」とくぎを刺した。

<家計重視に移行しない政策>

中国政府は今年、消費主導の成長を優先的に目指していくと約束した。それでもこれまで打ち出された政策では、大型のインフラ投資プロジェクトや、政府が戦略的とみなす製造業やその他セクターに資金が流れる構図になっている。

第1・四半期の銀行融資も同様の流れだ。

主に住宅ローンと消費者ローンで構成される家計向けの新規融資は、第1・四半期の新規融資全体の16%で、残りは法人向け融資が占めた。昨年の新規融資における家計向けの比率は、2021年の40%から18%に急低下したのに、そこからさらに下がったことになる。

OCBC銀行の中国エコノミスト、トミー・シエ氏は「家計の収入見通しを再び上向かせるという面で、人民銀行が果たせる役割は限られる。雇用確保に対する信頼感を高めるような、より包括的な対応が必要になるかもしれない」と話す。

中国の労働市場は引き続き軟調で、若者の失業率は足元で過去最悪に近い20%。消費者信頼感指数は過去最低から持ち直したものの、低迷が続いている。

政府系の中国社会科学院のシニアエコノミスト、チャン・ミン氏は最近のリポートで「マクロ経済政策の重点は、供給サイドの市場参加者保護から、需要サイドの中低所得者保護へとまだ、移行していない」との見方を示した。

人民銀行にとって心配なことに、第1・四半期に消費よりも貯蓄に所得を回すと答えた人の割合は前期から3.8ポイント下がったとはいえ、なお58%と高水準だったことが最近の調査で分かっている。

第1・四半期の家計の新規貯蓄額は9兆9000億元(1兆4000億ドル)で、昨年全体の17兆8000億元の半分以上に達した。

いずれにしても西側諸国がインフレと格闘しているのに対して、中国の政策担当者は正反対の問題を懸念している形だ。

ある政策アドバイザーは「需要は弱く、供給は過剰であるのは間違いない。われわれはデフレのリスクを目にしている」と認めた。

(Kevin Yao記者)

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