- 2023/05/17 掲載
焦点:遠い経済正常化、米景気先行きがネック 設備投資下押し懸念
1―3月期GDPは前期比0.4%増(年率換算では1.6%増)で、22年4―6月期以来のプラス成長となった。コロナ禍の行動制限が外れて旅行や外食などの消費が戻り歩調となり、大宗を占める個人消費が復調した。
「個人消費が増えてプラス成長となった意義は大きい」と、政府関係者の1人は語る。内閣府によると、原油高や円安に伴う交易損失は約14.8兆円と、2四半期連続でマイナス幅を縮小した。
もっとも回復の足取りは鈍く、経済規模が正常化する状況とはなお距離がある。物価変動を除いた実質GDPは約548兆円と、コロナ前の水準(20年10―12月期の539兆円)を上回ったが、消費税率引き上げ前のピーク(19年7―9月期の557兆円)には依然として届いていない。
GDPのうち、企業の設備投資は前期比プラス0.9%と、予想に反して2四半期ぶりにプラスに転じたが、前四半期のマイナス0.7%とならせば年度後半は横ばい圏にとどまる。「全体的に上向きだが持ち直しのペースは鈍い」と、SMBC日興証券の丸山義正チーフマーケットエコノミストは指摘する。
GDPに先立つ4月に日銀が発表した全国企業短期経済観測調査(短観)によると、23年度の設備投資計画は、大企業製造業で5.8%のプラスと想定。資源価格の高騰などを背景に下方修正された22年度から回復し、実現すれば内需面からプラス成長を支えそうだ。
とはいえ、米国をはじめ海外景気の先行き不透明感がくすぶる現状に、専門家の間では「短観で示された計画実現は難しい」(前出の丸山氏)との見方が強い。
23年1―3月期は、輸出の伸び悩みが響いて外需寄与がマイナスに転じた。「米国の景気悪化の影響はこれから出てくる。輸出と、製造業の設備投資には今後下押し圧力がかかりやすい」と、ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎・経済調査部長は語る。
海外景気の先行き不透明感に加え、企業には、防衛力強化に伴う税負担や、子育て予算倍増に向けた追加負担を求められることも予想される。
賃上げ原資の継続確保といった課題も残る中、力強い設備投資を続けられるかが今後の焦点となる。
(山口貴也、杉山健太郎 編集:橋本浩)
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