- 2023/06/21 掲載
物価見通しに大きな不確実性、政策修正は時期尚早=安達日銀委員
[東京 21日 ロイター] - 日銀の安達誠司審議委員は21日、鹿児島県金融経済懇談会であいさつし、物価のメインシナリオは大きな不確実性を伴っており、金融政策の修正に踏み切るのは「時期尚早だ」と強調した。
イールドカーブ・コントロールについては、予想物価上昇率がひと頃に比べて上昇しているものの、先行きの物価のメインシナリオや下振れリスクの存在なども考慮すれば、YCCの枠組みは必要だと話した。
日銀は消費者物価の前年比について、いったんプラス幅を縮小した後、2%の物価目標に向けて再びプラス幅を拡大していく展開をメインシナリオにしている。安達委員は「このメインシナリオには大きな不確実性があり、上振れ・下振れともにリスクは相応に厚い」と述べた。
<金融面のストレス、米景気後退を増幅するリスクも>
安達委員は価格改定の頻度に応じて物価を2つに分類。サービス価格を中心に改定頻度が少ない「粘着的な消費者物価」と、改定頻度が多い財価格を中心とする「伸縮的な消費者物価」に大別した。その上で、当面は物価の上振れリスクに注意が必要だが、その後は下振れリスクにより注意が必要と述べた。
物価の上振れリスクとして、「粘着的な消費者物価」の上昇が続く一方で「伸縮的な消費者物価」の上昇率が下がらないリスクを指摘。日銀が実施している「生活意識に関するアンケート調査」の結果などを見ると「家計において、これまで定着していた『物価は上がらない』という物価観が変化する時期に来ている可能性もある」と述べ、こうした物価観の変化をもとに、企業が原材料価格が下がっても値下げしなければ、伸縮的な消費者物価の上昇率は想定ほど下がらない可能性があるとした。
一方で、物価の下振れリスクとしては、伸縮的な消費者物価がいったん下がった後で想定通り再浮上しない可能性を指摘。伸縮的な消費者物価には資源価格などが影響を及ぼす観点から、海外経済の不確実性を挙げた。
安達委員は米国景気の先行き懸念を強調した。米国で短期金利が長期金利を上回る「逆イールド」状態となっていることについて「先行きの景気後退のシグナルだとの見方も引き続き排除できない」と述べた。
1980年代後半に本格化したS&L(貯蓄貸付組合)危機、2008年のリーマン・ショックと、金融面のストレスが景気後退を増幅した例は少なくなく「仮に金融面のストレスが生じた場合でも、それが実体経済に与える影響を正確に予測することは容易ではない」と警戒感を示した。
(和田崇彦 編集:田中志保、石田仁志)
*物価の上振れ・下振れに関する発言を追加しました。
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