- 2023/06/23 掲載
アングル:地方の「割安中古」人気、中国不動産に光明か不信か
フーさんがこれまでに買った物件の大半は、築およそ30年の2ベッドルームないし3ベッドルーム。今月には鶴壁で15戸目となる物件を1万8000元(2528ドル)で手に入れた。鶴壁では過去2年で住宅価格は急落している。
「これらの物件はまるでキャベツのように、超安値で売られていた」と話すフーさんは、家族が株で損をした経験があるので、自分は株は買わないと付け加えた。
鶴壁だけでなく、東部安徽省の淮南市や山東省の乳山市、南西部雲南省の箇旧市でも、ほぼ地元以外の人々が住宅購入に動いている、と複数の不動産仲介業者が明かす。
中国の不動産市場全体は引き続き悪化傾向だ。5月の新築住宅価格は上昇ペースがさらに鈍り、不動産投資はこの20年余りで最も急速な落ち込みを見せている。
こうした中で中小都市で物件買いが広がっても市場全体への影響力は乏しいし、そもそも具体的な購入件数のデータも入手できない。それでも危機的状況に見舞われてきた不動産市場にとって、一筋の光明になっているとは言えそうだ。
手元資金があって不動産市場に戻ってこようとしている買い手にとってみれば、中小都市の底値で推移する中古集合住宅物件には手を出さない方が難しい。
フーさんの場合も、鶴壁で最も安かった物件は税金と手数料抜きで驚くことに何と1000元だった。中国最大級の不動産取引プラットフォーム、安居客集団のデータによると、鶴壁の一部地域では物件価格が2021年のピークから27%下落しており、淮南や乳山、箇旧でも地域によって下落率は24%を超えるという。
対照的に中古住宅の平均価格が何万元にも達する北京は、5月までの半年間の下落率はわずか1.5%で、西南部の大都市である重慶でも下落率は過去5年で10%強にとどまっていることが、安居客集団のデータをロイターが計算して分かった。
<自信なさの表れか>
ほとんどが地元以外とされる中小都市の物件購入者の顔ぶれは、まったく住むつもりがない投機目的の人から、競争社会を嫌って最低限の生活を送りたいという「?平(寝そべり)主義」を掲げる若者、老後の生活に向けて手頃な家を探している人までさまざまだ。
淮南のある不動産仲介業者は、「買い手の大半は地元住民ではない」と述べ、大都市の生活費が高騰しているので、若者がここにやってきて安い家を買って寝そべり生活をしていると説明した。
乳山の業者も、買い手は地元以外の中国各地からでほぼ占められ、主に40代から50代が引退後に海沿いで過ごそうと考えていると指摘。箇旧の業者の話では、買い手は生活費の安さを理由に移住を目指しているという。
もっとも中国経済が、なお新型コロナウイルスのロックダウンで受けた痛手から立ち直るのに苦戦中であることをうかがわせる幅広い材料が出てきている以上、アナリストは中小都市での物件購入活発化を先行きの強気シグナルと結論づけるのをためらっている。
実際、消費者信頼感は引き続き過去20年余りのレンジを下回っており、消費者や企業は支出や投資よりも借金返済を優先しているので内需は弱い。若者の失業率は過去最悪の20%超で推移している。
華宝信託のエコノミスト、ニー・ウェン氏は「非常に多くの人々が中小都市で低価格の集合住宅を買っているという事実は警戒感の裏返しと言える。先行きの所得に自信を持てないのだ」と主張した。
(Liangping Gao記者、Marius Zaharia記者)
おすすめコンテンツ
PR
PR
PR