- 2023/07/13 掲載
AI、日本再成長のチャンスに=三井住友FGの内川CIOインタビュー
三井住友フィナンシャルグループ(FG)は、対話型人工知能(AI)「チャットGPT」の技術を使った生成AIを行内業務に導入する。4月から実証実験を始め、情報検索や資料作成などに活用。顧客向けサービスへの展開も検討する。内川淳執行役専務グループCIO(最高情報責任者)が12日までにインタビューに応じ、「生成AIは人手不足の解消につながる。日本再成長のチャンスだ」と語った。主なやりとりは次の通り。
―これまでのAI活用事例は。
2014年に米IBMの質問応答システム「ワトソン」を導入し、(チャットで質問に自動で回答する)「AIチャットボット」をコールセンター業務に取り入れた。今はグループ10社以上がAIチャットボットを活用している。
―チャットGPTの利点は。
日本語の表現能力が飛躍的に高まった。これまでは事前に学習したデータの範囲内でしか答えられなかったが、チャットGPTはやりとりの中でさらに精度を上げることができる。大きなパラダイムシフトだ。
―実証実験の手応えは。
専門用語や法令といった情報検索、海外ニュースの翻訳のスピードなどが格段に上がっている。社内外での情報発信やメールのやりとり、議事録の要約などでも作業効率や生産性が改善され、従業員はより付加価値の高い業務にシフトすることができる。
日本企業の最大の課題は人材や労働力の不足。この課題を解決してくれるのが生成AIで、日本再成長のチャンスでもある。
―現場の反応は。
アンケートでは、情報検索や翻訳、文書作成に活用できるという回答が非常に多かった一方で、アイデアの提案といった「創造性」には課題があるという回答も多い。真に創造的なものはAIには難しく、人間がやるべき根源的な仕事ではないか。
―6月にはAIガイドライン(指針)を整備した。
これまでもガイドラインはあったが、今回は利用する従業員の視点で気を付けるべきことをまとめた。生成AIを使うリスクの認識が狙いだ。出力された情報は必ずしも正しくなく、人権の問題や法令、規定に違反していないか確かめるよう促している。
―今後の展開は。
三井住友銀行の600人ぐらいで実証実験を始め、現在は2000人規模になった。なるべく早く、7月中にも全行4万人規模に拡大したい。
また、顧客企業向けサービスの質向上にも活用できると考えている。既に検討は始まっており、各部からアイデアを募っている。コンサルティング業務などでの活用案が出ている。コールセンターなど顧客とのコミュニケーションにも活用できると思うが、完全には代替できないだろう。AIに丸投げするのではなく、業務の一部に組み込んでいくことが第一ステップだ。
内川
淳氏(うちかわ・じゅん)東大理卒。88年に住友銀行(現三井住友銀行)入行。三井住友銀システム統括部長を経て22年4月三井住友FG執行役専務グループCIO。58歳。東京都出身。
【時事通信社】 〔写真説明〕インタビューに答える三井住友フィナンシャルグループの内川淳執行役専務グループCIO(最高情報責任者)=6月26日午前、東京都千代田区
関連コンテンツ
関連コンテンツ
PR
PR
PR