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  • 2023/07/21 掲載

アングル:アジアのプライベートクレジット市場活況、資金調達難で企業が利用

ロイター

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[シンガポール 21日 ロイター] - 世界的な商業用不動産サービス会社JLLは、米アリゾナ州の不動産プロジェクトの資金を調達するため、社債発行や銀行融資を検討したが、資金調達のめどが立たなかった。

そこで注目したのが、機関投資家が企業に直接融資する「プライベートクレジット(非公開融資)」市場だ。JLLはあっさり資金を調達できた。

JLLが確保したのは不動産会社ファイブ・スター・デベロップメント向けの借り換え融資5億8500万ドル。融資金利は非公開で、調達コストは銀行融資や社債発行を上回った可能性がある。

だが、JLLキャピタル・マーケッツのマネジングディレクター、ブライアン・クラーク氏は、社債発行や銀行融資などのパブリック市場では「建設プロジェクトに資金を出したくない」、「この額の融資は行えない、行いたくない」といった貸し手や、債務市場のボラティリティーを不安視する貸し手が多かったと振り返る。

一方のプライベートクレジット市場では資金の出し手に「潤沢な流動性」があり、貸し手と借り手の利害が一致したという。

5月に発表されたこの融資は、活況を呈するプライベートクレジット市場で成立した取引の一例だ。この市場では、高い利回りを確保したい年金基金や富裕層向け資産運用会社といった長期の資金の出し手が、パブリック市場で資金を調達できない借り手の需要を満たしている。

プライベートクレジット市場には、不動産開発会社のほか、株式市場の変動で「ダウンラウンド」(以前よりも低い企業評価額での資金調達)を余儀なくされている非公開企業やスタートアップ企業も押し寄せている。

資金の出し手にも事欠かない。「非流動性プレミアム」で高いリターンが期待できるためだ。

欧米に後れを取っていたアジアでも、ようやくこうした風潮が広がっている。投資会社ミューズニッチはこのほど、アジア太平洋地域にに投資する5億ドルのプライベートクレジットファンドの組成を完了したと発表。

ミューズニッチのアンドリュー・タン・アジア太平洋部門最高経営責任者(CEO)によると、プライベートクレジットは通常、期間3年で利回りは10─18%前後。これに対し、ICE・BofAグローバル・ハイイールド・インデックスの実効利回りは約8.3%だ。

同CEOは「アジアのプライベート・クレジット市場は急成長している。この旅はアジアでまだ始まったばかりだ」と語る。

プライベート・クレジット市場は極めて不透明で、規制もほとんどないが、香港のPAGやADMキャピタル、ベイン・キャピタル、インドのコタック・マヒンドラ・バンクなどが、本格参入を計画している。

<非流動性プレミアム>

世界最大の資産運用会社ブラックロックは先月、リテール投資家向けのプライベートクレジットファンドを投入した。

オーストラリアの年金基金ユニスーパーも、プライベート市場で150億ドルを運用。非上場のインフラや未公開株に投資しており、投資先の拡大を検討している。幹部によると、30億─50億ドルの追加投資を行う可能性がある。

バークレイズのデータによると、民間の中小企業向けに投融資を行う「ビジネス・デベロップメント・カンパニー(BDC)」の世界全体の資産運用額は今年第1・四半期に2800億ドルと、2年前の2倍近くに達した。BDCはクローズドエンド型投資ファンドの形態を取ることが多い。

プライベートクレジット市場のこうした活況の背景には、積極的な金融引き締めが世界的に行われたことや、米地銀部門の混乱で銀行が融資に慎重になったことが挙げられる。

ベアリングスのアジア太平洋プライベートファイナンス部門のトップ、シェーン・フォースター氏は「最近の銀行部門に対する懸念などがボラティリティーにつながり、市場が不透明になる。そうなると、パブリック債務市場に影響が及び、市場が完全に閉鎖されたり、最優良の借り手以外は資金が調達できなくなる」と指摘。

「現時点でプライベート債務に対する投資家の需要は非常に高いと言って差し支えない。投資妙味のある資産クラスとの見方が理由だ」と述べた。

UBSアセット・マネジメントのアジア太平洋グローバル・ソブリン市場部門責任者ベノ・クリンゲンバーグティム氏によると、主にアジア太平洋地域の商品輸出国・非商品輸出国の政府系ファンドも、未公開株、不動産、インフラ、商品連動型投資などで構成するプライベート市場に多額の資金を配分している

同氏は「こうしたファンドは非流動性プレミアムの獲得を目指す超長期志向のファンド」だと指摘している。

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