- 2023/07/21 掲載
アングル:台湾株に海外資金流入、AI関連株高騰 アジアの勝ち組
台湾にはコンピューターのハードウェア、ソフトウェアのサプライチェーン(供給網)が整備されており、株式市場に多数の大手ハイテク企業が上場している。
海外勢の上半期の買い越し額は120億ドルと、2008年上半期以降で最大。主要株価指数は米ドル建てで今年20%値上がりし、アジアで最高の上昇率を記録している。
台湾経済は減速しており、台湾周辺では中国軍が繰り返し軍事演習を実施しているが、投資家はすぐに資金を引き揚げられる体制を整えることでリスクに対処できると指摘。AI関連株の上昇は今後も続くと予想している。
ユニオン・バンケール・プリヴェのアジア担当シニアエコノミスト、カルロス・カサノバ氏は「今行われているのは戦術的なトレードだ。テックセクターのバリュエーションがピークに達するまでの短期的な視点に基づいているケースが多い」と指摘。「そうした投資家にとって、将来の潜在的な台湾有事はあまり重要ではない」と述べた。
米著名投資家ウォーレン・バフェット氏は昨年、半導体受託生産大手、台湾積体電路製造(TSMC)の保有株の大半を購入後わずか数カ月で手放したことについて、地政学的な緊張を考慮したと述べている。
台湾のある市場関係者は「中国軍の脅威を懸念していないと言える人は誰もいないだろうが、われわれは長年にわたって中台関係の緊張と隣り合わせに暮らしている」と指摘。
「台湾にはAIのサプライチェーン全体があり、潜在的なライバルにとって参入障壁は極めて高い。このため、外国人投資家には台湾のAIサプライチェーンが非常に魅力的に映る。今年末まで大規模な海外資金流入が続くだろう」と述べた。
<明らかな勝ち組>
ソシエテ・ジェネラルのアジア株戦略責任者、フランク・ベンジムラ氏は「半導体セクターの好転が期待される中、アジアで勝ち組となっているのは明らかに台湾であり、今後もそうした状況が続く可能性が高い」と指摘。
証券会社のKGIアジアによると、ハードウェアメーカーでは、回路基板のユニマイクロン 、ネットワーク・スイッチのアクトン・テクノロジー、電子機器受託生産の鴻海(ホンハイ)精密工業などが恩恵を受けるとみられる。
サーバーの組み立てなどを手掛けるウィストロン、ノートパソコン製造のクアンタ・コンピュータ、半導体設計のアルチップ・テクノロジーズとグローバル・ユニチップは、今年に入り株価が軒並み2倍以上に値上がりしている。
ヘッジファンドのマンGLGでアジア株(日本を除く)の責任者を務めるアンドリュー・スワン氏は「われわれは現在進行中のAI革命のスタート地点にいる」と発言。
提出書類や報道によると、著名投資家キャシー・ウッド氏率いるアーク・インベストメント・マネジメントも6月にTSMC株を購入。バンガードとパインブリッジ・インベストメンツ・アジアも第2・四半期にアルチップへの投資を拡大した。
もっとも、誰もが台湾株に強気なわけではない。台湾は需要低迷で輸出と域内経済が圧迫されており、ゴールドマン・サックスは、一段の海外資金流入には企業業績の改善が必要になる可能性があると指摘している。
また来年1月には総統選が予定されており、緊張や政治的な問題が表面化する可能性が高い。
ただ、投資家はこうした懸念要因は対処可能と指摘する。
台湾株への投資を拡大しているBNYメロン・インベストメント・マネジメントのアジア太平洋地域(日本を除く)顧客ソリューション責任者クラレンス・チャン氏は「両岸関係が戦争に発展する差し迫ったリスクはないと見ている」とし「中国政府は台湾よりも、若者の失業問題や新型コロナウイルス後の景気回復など、より差し迫った課題に取り組んでいる」と述べた。
(Georgina Lee記者、Faith Hung記者)
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