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  • 2023/07/24 掲載

アングル:ロシアで中国自動車メーカー急拡大、西側撤退の穴埋める

ロイター

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[20日 ロイター] - ロシアの首都モスクワで昨年11月、旧ソ連時代の自動車ブランド「モスクビッチ」の復活生産を祝う式典が開催された。フランスのルノーがロシア事業撤退を決めて、モスクワ市に1ルーブル(約1.6円)で売却した工場で生産されたのがモスクビッチだ。

モスクワ市長のセルゲイ・ソビャーニン氏は「歴史的な出来事だ。(西側諸国の制裁で)多くの人がロシアの自動車産業は終わったと思ったことだろう」と語り、これで同産業の底力が証明されつつあると胸を張った。

しかし、モスクビッチ復活は、中国がロシア自動車産業で影響力を急速に高めていることも表れでもある。

生まれ変わったモスクビッチのモデル「3」は、かつての姿とは似ても似つかない流線型の4ドアSUV(スポーツタイプ多目的車)。中国の安徽江淮汽車集団(JAC)製のエンジン部品や内装を模しているのは明白だ。

2人の関係者は、ロイターの取材に対し、「3」は中国のパートナーから購入した部品を使ってモスクワで組み立てられたJACの「思皓(SEHOL)X4」そのものだと明かした。

モスクビッチも先月、「3」と電動モデルの「3e」は海外の工場で製造された部品を輸入してロシアで最終的な組み立てを行っており、「外国のパートナー」と協力していると説明したが、JACがパートナーとは認めていない。

いずれにしてもロシア自動車業界のデータを見ると、ウクライナ侵攻以前に市場で優越的な地位にあった西側メーカーが引き揚げた後、その間隙(かんげき)を突くように中国メーカーがシェアを確保している様子が分かる。

オートスタットのデータによると、ロシア自動車市場における6月の中国車の販売台数は4万台に達し、シェアは49%と2021年6月の7%から大きく拡大した。1―6月のロシア向け中国車の輸出総額は約46億ドルと前年の6.4倍に上る。6月だけでも輸出額は10億ドル超になった。

さらにこの数字だけでなく、中国メーカーはルノーや日産自動車が残した工場で組み立てた自動車の販売も増やしていることがロイターの調べで判明した。

ロイターが関係者などに取材したところ、以前に欧米や日本のメーカーが所有していたロシアの6つの工場は今、中国車を生産中か生産する計画を持っている。この6工場の合計生産能力は年間約60万台だ。

自動車業界専門家のウラジミール・ベスパロフ氏は、存在感を増す中国メーカーがロシアにとってもメリットをもたらしていると指摘。休止していた工場の再稼働を促し、雇用を確保してくれるからだと付け加えた。

プーチン大統領の2020年の発言に基づくと、自動車産業ではおよそ30万人が働いている。

<急速な躍進>

1991年のソ連崩壊後、ロシア政府は西側自動車メーカーによる工場建設を積極的に奨励し、各種補助金も提供。2021年の国内乗用車生産台数は約140万台で、全生産能力における稼働率は50%前後となっていたが、昨年は西側メーカーの撤退で生産台数が45万台とソ連崩壊以降、最悪の水準に落ち込んだ。

ウクライナ侵攻前に70-75%だった国産車の市場シェアも、足元では40%弱に低下している。

こうした中でロシアの自動車ディーラー、アフトドムを率いるアンドレイ・オルコフスキー氏は「ロシア市場で中国メーカーの伸張が続くのは間違いない。ロシア自動車産業でその代役は見当たらない」と述べた。

メルセデス・ベンツの複数の子会社を取得したアフトドムは現在、いくつかの中国メーカーとの間で、メルセデスが所有していたモスクワの工場での中国の高級車組み立てを巡る協議が進行中。オルコフスキー氏によると、年内にパートナーを発表する可能性がある。

中国メーカーはロシアでつい最近になって生産が始まったばかりで、2019年に長城汽車が先陣を切った。この長城汽車のツーラ工場で生産された「哈弗(Haval)」は今やロシア市場のシェアがほぼ10%になっている。

ロシア市場シェア上位10ブランドのうち6つは、哈弗を含めた中国勢だ。

<ロシアメーカーの動き>

複数の関係者の話では、中国勢と提携したロシアメーカーも西側企業が残した工場で、以前よりも少ないながらも生産を行っている。

大手メーカーのソレルスは昨年11月、モスクワの東約440キロにある工場で小型商用車「アトラント」と「アルゴ」の生産を開始したと発表した。この工場はかつて、フォードの車を生産していた。ソレルスは現在のパートナー名を明かしていない。

ただ、別の関係者は、JACがアトラントとアルゴ向けに組み立て部品を供給していて、アトラントもアルゴもJACのモデルをリブランド化したものだと語った。

今年2月にサンクトペテルブルクにある日産自動車の工場を取得したロシア最大手メーカーのアフトワズは、「東側のパートナー」と協力して「ラーダXクロス5」の生産を始めている。

アフトワズに近い人物はロイターに、中国の第一汽車集団(FAW)の小型SUV「奔騰(Bestune)T77」がラーダ生産に活用されていると述べた。

ロシアは昨年、西側企業が残した資産を政府系機関に取得させ、国内自動車生産を確保する取り組みを主導してきた。

一方で、昨年59%減少した販売台数の回復に中国勢が重要な役割を果たした事実を、ロシア政府ははっきりとさせず、国産ブランドの復活を宣伝している。マントゥロフ副首相兼産業貿易相は、その第1弾がモスクビッチとラーダであり、「ボルガ」も来年にはお披露目されるとの期待を示した。

それでも、ロシア中央銀行は今月半ばに公表したリポートで、中国メーカーの影響力増大を認め、昨年休止していた中部や北西部にある幾つかの工場が、中国モデルをベースにした車を自社ブランドとして生産していると解説している。

(Gleb Stolyarov記者、Alexander Marrow記者)

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