- 2023/07/26 掲載
ビッグモーター不正「天地神明に誓って知らず」=説得力欠く社長釈明―顧客軽視、不合理ノルマも
中古車販売大手ビッグモーター(東京)の兼重宏行社長が、保険金不正請求問題の責任を取り、26日付で辞任する。従業員が顧客を軽視し、経営陣を忖度(そんたく)する企業風土の下、不正は繰り返された。上意下達の気風が強いオーナー企業だけに「経営陣は知らなかった」と語った創業者でもある兼重社長の釈明は説得力を欠く。
「天地神明に誓って知らなかった」。兼重社長は会見で、6月26日に特別調査委員会が報告書をまとめるまで一連の不正に全く気付かなかったと繰り返し、不正の組織的関与も否定した。
同社は、兼重社長が山口県岩国市に前身となる「兼重オートセンター」を1976年に創業。80年に社名を現在のビッグモーターに変更し、店舗網を広げた。東京の一等地、六本木ヒルズに本社を構え、全国約300店舗、従業員は約6000人。買い取り台数で「6年連続日本一」(同社)を掲げる業界大手に、一代でのし上がった。
実力主義をうたい、営業成績が振るわなければ即時に降格といった苛烈な処遇を、兼重社長は「敗者復活もある抜てき人事」「社員教育の一環」と表現した。しかし、こうした「実力主義」が、事故による損傷度合いに応じて修理するはずの板金部門で、あらかじめ修理代金と粗利益の目標額をノルマとして決める「不合理の極み」(兼重社長)を横行させる温床となった。
昨年1月ごろには兼重社長のおいが、不正を写真付きで告発した。しかし、過去においと職場の上司との確執が報告されていたことから兼重社長は「今回もまたか。仲良くやってくれ」と上司への不満と思い込み、調査などには乗り出さなかった。
後任の社長に就任する和泉伸二専務は「創業者の卓越したビジネスモデルにより、業界を代表する企業になった半面、あまりにも強過ぎるリーダーシップに頼りきっていた」と振り返った。
ビッグモーターは、水平分業で互いの業務を知らなかったと説明する一方で、経営幹部らが日頃から無料通信アプリ「LINE」で密接にやりとりしていたことは認めている。経営幹部全員が不正を全く知らなかったとの説明には疑問が残る。真相究明に向け第三者による再調査の必要性は一段と増している。
また、顧客の信頼を裏切った代償は大きく、同社の直近の販売台数と買い取り台数は、いずれも通常と比べて半減しているという。真摯(しんし)に顧客に向き合い返金や再修理などの対応をしたり、コンプライアンス(法令順守)意識を社内に浸透させたりするなど、経営立て直しに向けて、新経営陣が取り組む課題は山積している。
【時事通信社】 〔写真説明〕頭を下げる中古車販売大手ビッグモーターの兼重宏行社長(左から2人目)ら=25日午後、東京都港区
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