- 2023/07/28 掲載
生成AI、面白がって=松尾豊・東大院教授インタビュー
対話型人工知能(AI)「チャットGPT」をはじめとする生成AIが急速に普及する中、米中などに比べ日本の開発力の遅れが目立つ。政府のAI戦略会議座長を務める松尾豊・東大大学院工学系研究科教授が27日までにインタビューに応じ、現状を正しく認識し、「面白がる」ことでチャンスも出てくると語った。主なやりとりは次の通り。
―生成AIの社会へのインパクトは。
非常に大きい。チャットGPTは技術の一つのショーケースだが、今の段階でこれだけ話題になり、便利に使えるということは、ビジネス用途となってさまざまな業務に取り入れられたときにどれだけのインパクトになるか分からない。影響は想像もできない。
―日本の現状をどう見る。
もっとちゃんとAIに取り組んでいかないといけない。皆さんが今使っているスマートフォンやアプリ、サービスはどこの国のものか。日本人が使っているものですら日本製のシェアが減っており、グローバルで見ればもっと少ないという現状認識からスタートしなければいけない。
ただ、悲観的にも楽観的にもなる必要はない。弱いなら弱いなりに正しく状況を認識すればいろんなチャンスが見えてくる。今は技術の黎明(れいめい)期であり、大きなチャンスでもあるので、そこを意識するべきだ。
―どのように取り組むべきか。
食文化からマンガやアニメまで、日本が強い分野は、日本人が面白がって自分たちで勝手に進化していくパターンが多い。「こうするべき」ではなく、面白がってやることが重要だ。その上で、AIは何兆円という規模の戦い。医療や製造業、金融業などの大きな産業に結び付ける必要がある。
―政府の後押しはどうあるべきか。
(データ処理に必要な)画像処理半導体(GPU)など「計算資源」のインフラ投資は国がサポートすべきだ。今、世界ではGPUの争奪戦が起こっている。港や道路と同様、インフラをつくることでいろんな産業が生まれる可能性がある。日本語のデータを使いやすい形で整備する必要もある。
ただ、それ以上は、民間を中心にスピード感を持って進めることが重要だ。各事業者が「これがもうかる」と思ってさまざまな動きをすることが大事で、その中から大きな事業の芽が生まれてくる。
―著作権など多くの課題も指摘される。
現行法では何が著作権者の利益の不当な侵害に当たるのか。そういった考え方を政府がしっかり出すことが重要で、その上で法令を変える必要があれば変えればいい。偽情報や機密情報の扱いなどについてリスクの啓蒙(けいもう)も大切だ。
松尾
豊氏(まつお・ゆたか)東大院博士課程修了。米スタンフォード大客員研究員などを経て19年東大院工学系研究科教授。23年から政府のAI戦略会議座長。48歳。香川県出身。
【時事通信社】 〔写真説明〕インタビューに答える松尾豊東大大学院教授=6月28日、東京都文京区
関連コンテンツ
関連コンテンツ
PR
PR
PR