- 2023/08/03 掲載
アングル:猛暑で注目「涼しくなる服」、繊維各社も売り込み
繊維メーカーなども、綿よりも吸水性が高いとしてリヨセルやテンセルを使った衣料を売り込んでいる。
インフレに苦しむ消費者が必需品の購入を優先したため、衣料品小売業者の売上は減少。それだけに少なくとも3つの大陸が熱波に襲われている今夏、業者は「冷却性」衣料のマーケティングに力を入れている。
アパレルメーカーや販売業者は、綿やポリエステルよりも快適な着心地を提供することを目的とした軽量素材や高機能の生地、さらには着用者に「能動的な」冷却を提供するというハイテク繊維に期待している。
ジェーン・ハリ&アソシエイツのアナリスト、ジェス・ラミレス氏によると、このような繊維の多くはスポーツ用品ブランド、ルルレモンなどのアスレチックウエアに長年使われてきた。しかし気温の上昇に伴い、より多くの小売業者が夏向けにこうした繊維を利用するだけでなく、暖冬化に伴って通年のスタイルとしても広がっている。
メーシーズ幹部らはロイターに、同社の最新商品には、リヨセルを使用したトレンチコートや、絹に似た性質の素材、モダールを使用したTシャツがあると述べた。
メーシーズのプライベートブランド戦略担当上級バイスプレジデント、エミリー・エルシャヒルク氏は、「通気性」や「冷却性」を押し出してこうした商品を販売していくと説明した。
女性服ブランドのリフォーメーションは6月、テンセルを使用したスカートやボトムス、ドレスの販売を開始した。
テンセルを製造するレンチングは昨年、タイの工場で生産を増強。同社幹部のシャロン・ペレス氏は、他の素材に比べてコストが1ポンド当たり0.10ドルも高いにもかかわらず、スポーツ用品のパタゴニアや、アパレル大手VF傘下のノースフェイスからの需要が伸びていることを理由に挙げた。
非営利団体テキスタイル・エクスチェンジによると、リヨセル、モダール、キュプラなどセルロース系繊維の世界生産量は2022年に10%以上増加し、720万トンに達した。
メーシーズやラルフ・ローレン傘下のポロに供給するインドネシアの工場、PTゴールデン・テクスティルは近年、「高機能」素材の生産量を2、30%増やした、と同社の米デザイン・ディレクター、ベス・カーター・シュラック氏が語った。
ただ、冷却性をうたう素材が体温を下げるのか、それとも単に着用者の快適性を高めるだけなのかは、まだ不明だ。
米繊維化学・色彩学協会によると、繊維業界団体は冷却性を評価するための試験を開発している。そのほとんどは、水分を分散させて素早く乾燥させる能力を測定することで、冷却機能の評価を代用している。
ただノースカロライナ州立大学で繊維を研究するロジャー・バーカー氏によれば、企業は冷却効果をうたう際に特定の試験を義務付けられておらず、研究結果が必ずしも実用に反映されるわけではない。
<能動的冷却>
米ライクラが開発した「クールマックス」など、高機能素材を使用した衣類の生産も増えている。
ファーストリテイリングのユニクロは、ポリエステルと綿花のくずなどから作られたキュプラを使用した、超極細でなめらかな素材の「エアリズム」ラインを拡大し、速乾性と涼感を実現したとしている。
またファッション大手JクルーやH&Mが採用するクールマックスは、寝具や寝袋にも使用されている。
気温上昇に伴い、より高度な「能動的冷却」繊維技術の開発も進む。これは、従来の大半の素材が提供してきた受動的冷却と違い、熱を閉じ込めて放出する素材が埋め込まれている。
コロンビア・スポーツウェアはこの夏、「能動的」技術と吸湿性、そして汗を吸収するというプリントを組み合わせることで「オムニフリーズ・ゼロ・アイス」素材を改良し、新しいトレーナーを発表した。
同社のイノベーション担当バイスプレジデント、ハスケル・ベッカム氏は、暑い環境向けの新しいスタイルの創造は「引き続き注力分野」になるだろうと語った。
アトランタの繊維メーカー「brrr」も同様の冷却素材を用い、アディダスなど47ブランドと提携している。brrrの素材を使った衣服の多くは暑い夏向けだが、季節外れの暖冬が増えるにつれ、寒い季節用にも需要が高まっていると営業担当バイスプレジデントのジュリー・ブラウン氏は言い、「ウォーキングやハイキング、スキーに出かける場合、多くの人が冬でも冷却効果を求めている」と説明した。
(Katherine Masters記者)
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