- 2023/08/05 掲載
金利高・円安が同時進行=政策修正の余波続く―日銀決定から1週間
日銀が金融政策の修正に踏み切ってから、4日で1週間。長期金利が上昇する一方、本格的な金融引き締めに懐疑的な見方から円安が進むなど政策修正の余波が続く。金利上昇の行き過ぎをけん制しようと、日銀が臨時の国債買い入れオペレーション(公開市場操作)を実施すると円安が加速するといった想定外の事態も生じ、日銀は対応に苦慮している。
「今回は為替市場の変動も含めて考えた」。植田和男日銀総裁は7月28日の政策修正後の記者会見で、長期金利の変動許容幅の上限を0.5%から1%に事実上引き上げた理由の一つは、過度な円安進行への対応だと明かした。
長期金利の指標となる新発10年物国債の流通利回りは政策修正前、0.5%を下回っていたが、決定後は上昇基調が鮮明化。8月3日には一時、0.655%に上昇(債券価格は下落)し、2014年1月以来約9年7カ月ぶりの高水準を付けた。
これに対し、日銀は金利上昇ペースが速過ぎると判断。7月31日に続き、8月3日も臨時の国債買い入れオペを実施した。金利の変動幅を拡大して国債取引を活発化させる一方、緩やかな上昇を促し、連動する住宅ローン金利などの急激な引き上げを防ぐ狙いがある。
一方、円相場は3日に一時1ドル=143円台後半を付けるなど円安傾向が続く。通常、日銀が金利上昇を容認すれば、日米の金利差縮小から円高・ドル安方向に振れやすいが、修正後も金融引き締めは当面ないとの見方が拡大。日銀が臨時オペで急激な金利上昇を認めない姿勢を示したことで、円売りが加速する場面もあった。過度な円安は輸入価格を押し上げ、原材料や食料品のさらなる値上がりにつながる恐れもある。
三井住友トラスト・アセットマネジメントの稲留克俊シニアストラテジストは「金融市場は当面、日銀のオペ対応を見極めながら、神経質な動きが続く」と見通している。
【時事通信社】
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