• 2025/07/07 掲載

アングル:中国、運転支援技術の開発「減速」 安全とのバランス重視

ロイター

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[4日 ロイター] - 中国の自動車メーカーが進める運転支援技術の開発速度は外国のライバルを上回っている。ただ中国政府が業界に発しているのは、スピードとともに慎重さも大事だというメッセージだ。

政府は、シャオミ(小米科技)の電気自動車(EV)セダン「SU7」が3月に衝突事故を起こし、乗っていた3人が死亡した事態を重く受け止め、運転支援技術への関心を強化。こうした中で当局が足元で、運転支援システムに適用する新規則の最終的な取りまとめに動いている。この事故は、運転支援システムから手動運転に切り替わった直後に発生した。

当局は各メーカーが運転支援技術を過剰宣伝するのを防ぎたい考えだが、一方で欧米勢との競争に負けない形で安全性とイノベーションをうまく両立させる道を追求している。

複数のアナリストによると、発展を阻害しないような運転支援技術の明確な規制体系を導入できれば、中国メーカーが国際競争の面で優位に立てる可能性が出てくる。米国では運転支援技術を巡る統一的な規制策定がなお行われておらず、メーカーが不満を表明する構図になっているからだ。

アクセンチュア・グレーターチャイナの自動車業界責任者を務めるマーカス・メッシング氏は、中国の規制当局や業界はかつての指導者鄧小平氏が掲げた哲学「踏み石を探りながら川を渡る」をずっと信奉してきたと指摘する。これは新しく不確実な技術の開発には着実な段階を踏む必要があるという意味で、これまで市場に大きな成功をもたらしてきたことが証明されているという。

現行の規則に基づくと、特定の条件においてハンドル、ブレーキ、アクセルを自動的に操作する技術の利用が認められているが、運転手が常に関与しなければならない。そうした理由から販売時に「スマート」や「自律的」といった表現を使うことは禁止されている。

新たな規制が重視するのは、運転手の意識状態や即座に運転ができるかどうかを監視するハードウエアとソフトウエアの設計だ。

このため当局は自動車メーカーの東風汽車と通信機器のファーウェイ(華為技術)を規制策定作業に加え、4日まで1カ月にわたって意見公募を続けていた。

同時に当局は国内メーカーに対して、一定の条件下で運転手が目を離すことが許される「レベル3」の支援システム導入を急ぐよう積極的に働きかけている。レベル3は完全自動運転を指す「レベル5」より2段階低い。

中国政府は国有の長安汽車に4月からレベル3の実証試験開始を認めていたが、シャオミの事故で計画はいったん停止している。関係者の話では、政府は年内に試験を再開し、来年中には初のレベル3システム搭載車の販売を承認する展開を望んでいるという。

中国では過去10年間でレベル2システム搭載車の普及が進んだ。テスラの「フル・セルフ・ドライイング(FSD)」や事故を起こしたシャオミの機能もこれに含まれる。

各メーカーはレベル2の機能を追加費用なしで提供するためにコスト圧縮に取り組んできた。EV最大手のBYD(比亜迪)は全車種に無料で運転支援機能が付加されている。カナリスの試算によると、今年中国で販売された新車の60%強はレベル2の機能を備えていた。

<支援と責任強化>

中国政府は国内メーカーに対して、急速にEV大国実現を後押ししたのと同じように、運転支援技術についても強力に支援しようとしている。昨年には自動運転車の公道走行試験を実行する9社を選定した。

一方で当局は、運転支援技術が適切に作動せず、事故が起きた場合、メーカーと部品サプライヤーが負う責任の強化に乗り出しつつある。昨年英国では同様の法案が可決された。

4月に開催された上海国際モーターショーにおいては、複数の企業がレベル3の機能を備えた自動車の投入に向けて前進していると強調。ファーウェイは、6億キロを超える走行シミュレーションを経て、高速道路でレベル3システムを利用できる態勢が整ったと明らかにした。

吉利汽車傘下のジーカーは、レベル3機能搭載のスポーツタイプ多目的車(SUV)を披露し、当局の認可が得られれば第3・四半期中に量産化できると説明した。

ただ上海国際モーターショーでは、メルセデス・ベンツやフォルクスワーゲンといった既存大手メーカーからは、レベル3に踏み込む動きは見られなかった。

複数のアナリストは、既にコスト面で中国勢より不利になっているこうしたメーカーにとって、レベル3で要求される安全基準を満たすための負担が試練になっていると述べた。

メルセデス・ベンツのマルクス・シェファー最高技術責任者はロイターに、半導体やコンピューターの価格は下がったとはいえ、レベル3で求められる追加的な安全性の確保でコストがずっと大きくなると打ち明けている。

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