- 2025/09/21 掲載
アングル:トランプ氏の四半期決算廃止案、意外な方面から支持の声
[ロンドン 16日 ロイター] - トランプ米大統領が四半期決算報告の義務付けを廃止するよう呼びかけたことに対し、意外な方面から「慎重な支持」が寄せられている。それは企業に長期的な持続可能性の取り組み強化を求めている国際投資家であり、その多くはトランプ氏から激しい非難を浴びてきた。
トランプ氏は15日、企業の決算発表頻度を四半期ではなく半年ごとにするよう求めた。バークシャー・ハサウェイのウォーレン・バフェット会長やJPモルガンのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)など経済界の重鎮も以前、短期主義が経済に悪影響を及ぼすとして同様の主張をしていた。
四半期決算を廃止すれば、世界最大の米国経済と世界で最も深みのある米資本市場が、世界的な潮流に加わる形になる。そうなれば、気候変動問題などへの取り組みを企業取締役会に求めている投資家に追い風となるかもしれない。
ケンブリッジ大学ジャッジ・ビジネス・スクールのコーポレートガバナンス専門家、デービッド・ピットワトソン氏は「責任投資を掲げる人々は、決して四半期決算を支持してこなかった。四半期決算は株式トレーディングに注目を集中させ、良い株式所有のあり方という問題から目をそらさせる傾向があるからだ」と述べた。
しかし持続可能性問題は、トランプ氏が今年1月に2期目の大統領に就任して以来、攻撃の対象となっている。その一環として、企業に気候関連データの開示を義務付ける規則を廃止する動きもみられる。欧州などの多くの投資家が開示を求めているデータだ。
投資会社アバディーンの持続可能投資ディレクター、ニック・ダンカン氏は「企業には長期的な視点で自社の戦略が及ぼす重大な影響を考慮し、持続可能性関連リスクを軽減する計画を立ててほしい。四半期決算の廃止によって、透明性や開示に影響を及ぼすことなくその目的を達成できるなら、それは明るい話だ」と述べた。
「四半期決算の負担が軽減されることで、企業が現在の持続可能性報告の水準を維持、向上しやすくなるなら、なおさら良い」という。
ダンカン氏によると、四半期決算の廃止には他にも明白な利点がある。決算発表前の「クローズド期間」が減ることだ。通常1カ月間設けられるこの期間中は、投資家による企業への接触が禁じられている。
数十年続いてきた証券法を改正し、四半期決算を廃止することは、世界最大の米資本市場にとって大変革となるだろう。
多くの欧州連合(EU)加盟国、英国、オーストラリア、ニュージーランド、香港では企業の決算発表が半年ごとに行われるため、海外投資家は何年も前からこうした慣習になじんでいる。
米国以外で四半期決算を法律で義務付けている最大の株式市場は中国本土だ。ただ、日本やドイツなどの国々も、上場全般やプレミアム市場への上場の条件として四半期決算を要求している。
英投資協会のステュワードシップ・リスク・税務担当ディレクター、アンドルー・ニニアン氏によると、10年以上前にEUとともに半年ごとの決算報告に移行した英国では、この変更が持続可能性への取り組み強化に役立った。
「四半期ごとの報告義務がなくなったことで、企業は短期的な目標の管理よりも、長期的な投資判断、戦略、報告に注力できる柔軟性を得た」
ただ一部の投資家は、投資家保護を強化するための措置が必要だとくぎを刺している。
英投資会社、エデントゥリー・インベストメント・マネジメントのシニア持続可能投資アナリスト、ヘイリー・グラフトン氏は「英国やオーストラリアなど一部の国では半年ごとの報告が機能しているが、米国は構造的な違いがあるため、状況はより困難だ」と語った。
例えば英国では、企業が業績予想を下方修正した場合、それを発表することが規制で義務付けられているが、米国では規制要件ではなく、開示を差し控えることも可能だと同氏は言う。
またオーストラリアでは企業が重要情報を継続的に開示する義務があり、業績がガイダンスから乖離(かいり)した場合には更新情報を発表することが求められるが、米国には同等の制度が存在しない。
それでもピットワトソン氏は、四半期決算報告の廃止が持続可能性を重視する投資家の追い風になり得るとみている。
「トランプ氏が言うように、四半期決算は経営陣の注意をそらすような連鎖反応を引き起こす。従って半年ごとの報告への移行は、長期的で付加価値を生み出す経営を支えるかもしれない。多くの業界関係者は良いことだと考えていると思う」と同氏は語った。
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