- 2025/09/29 掲載
ひょうにも負けず新商品=2年連続記録的不作―全国一のウメ産地・和歌山
「紀州梅」の名称で知られ、60年連続で収穫量日本一を誇る和歌山県のウメ。昨年は暖冬とひょう被害で記録的な不作となり、今年もひょうで大きな打撃を受けた。生産者からは落胆の声が上がる一方、梅干し業者の中にはひょうで傷が付いたウメを使った新商品を作る動きも出ている。
和歌山県ではウメの実が大きくなり始める4月に4日間ひょうが降った。県によると、南部9市町の生産地計4300ヘクタールが落果や実に傷が付くなどの被害を受け、被害額は過去10年で最悪の約47億8000万円に上った。昨年も、開花前の高温で実がならない「不完全花」が多くなったほか、ひょう被害やカメムシなどの害虫発生により、農林水産省近畿農政局の統計では、収穫量は2万9700トンと平年の半分以下だった。
JA紀州みなべいなみ梅部会の担当者は「順調に実も付き、『今年こそは』と思った直後のひょうだった。天気のことなので農家からは諦めの声もあったが、地獄に落とされた気分になった」と振り返る。
不作が続く中、ひょう被害にあったことをむしろ強調する商品を販売する会社も出てきた。梅干しのネット販売を展開する「梅見月」(同県みなべ町)は、ひょうに当たった梅を原料にした梅干しを「的中梅」と名付け縁起物として販売。梅干し製造加工「南紀梅干」(同町)では6月から、従来は「訳あり」としていた傷付きの商品を「まけん梅(ばい)」と名付け直して販売を始めた。かける手間暇は他の梅干しに負けないとの思いを込めたという。
南紀梅干の細川覚栄社長は「見た目に傷や、皮の硬い部分があるかもしれないが、味に変わりはない。(消費者に)作り手の思いを届け、共感してほしい」と訴える。
生産者からも窮状を乗り越えようとする動きがある。若手農家らが集まり、無添加の梅干しや梅酢なども販売する「梅ボーイズ」(同町)は、クラウドファンディングで集めた資金を基に、新規就農した人から傷ついた梅を一級品と同価格で買い取る取り組みを進める。リーダーの山本将志郎さんは「梅は傷ついたら価格が半減してしまう。生活が成り立たず、新規就農者が辞めてしまう可能性があったため、守りたいとの思いで始めた」と述べた。
【時事通信社】 〔写真説明〕ひょうが降って傷が付いたウメの実(和歌山県提供) 〔写真説明〕傷ついたウメの実が使用された梅干し「まけん梅」=19日、和歌山県みなべ町
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