- 2025/10/01 掲載
日銀9月短観、大企業製造業の業況2期連続改善 関税の不確実性後退
Kentaro Sugiyama Takahiko Wada
[東京 1日 ロイター] - 日銀が1日に発表した9月短観は、大企業・製造業の業況判断指数(DI)がプラス14と2期連続で改善した。米国との通商交渉を巡る不確実性の後退や、価格転嫁の進展などが業況の支えとなった。大企業・非製造業の業況判断DIはプラス34と前回から横ばいだった。製造業の増産投資などで大企業・全産業の設備投資計画は前回を上回り、堅調を維持した。
<自動車改善、米関税の影響は好悪両面>
大企業・製造業の業況判断DIは、前回調査から1ポイント改善した。ロイターがまとめた民間調査機関の予測中央値(プラス15)をわずかに下回ったものの、2024年12月以来の高水準。
業種別では、繊維、はん用機械、生産用機械、自動車などから米国の通商政策に関する不確実性が和らいだことによる受注の改善を指摘する声が聞かれた。はん用機械や造船・重機では、価格転嫁の進展が業績改善要因として上がった。
一方、米国による関税引き上げの影響を織り込み、鉄鋼や紙・パルプの業況は悪化した。
自動車の業況判断DIは2ポイント改善してプラス10。企業からは米関税措置に関して、輸出や収益への影響など好悪双方のコメントが聞かれたという。
大企業・製造業の先行き判断DIは12と、2ポイントの悪化を見込む。幅広い業種が米通商政策による不透明感を指摘した。
<非製造業、価格転嫁と物価高が綱引き>
大企業・非製造業の業況判断DIは前回から変わらず。ロイターがまとめた民間調査機関の予測とも一致した。
改善した業種では、建設、物品賃貸、卸売が価格転嫁の進展を要因に挙げた。電気・ガスからは、猛暑による電力需要の増加を指摘する声があった。一方、宿泊・飲食サービスは19ポイント悪化のプラス26と、悪化幅は全業種の中で最大。インバウンド需要の鈍化に加え、物価高による消費者の節約志向が重しとなった。
先行き判断DIは28と、6ポイントの悪化を見込む。幅広い業種からコストの上昇を指摘する声があったという。
事業計画の前提となる想定為替レート(全規模・全産業)は、25年度通期で1ドル=145.68円となった。6月調査(145.72円)とほぼ同水準だった。
<設備投資計画は上振れ>
大企業・全産業の25年度の設備投資計画は前年度比12.5%増と、市場予測(11.3%増)や前回(11.5%増)を上回った。製造業で上方修正されたことが大きい。増産投資のほか、足元の資本財価格上昇で設備投資額が上振れているとの声が出ているという。ただ、設備投資計画の上方修正について、関税を巡る不確実性の後退と結び付けたコメントは聞かれなかった。
大企業・製造業のうち、加工業種の25年度の経常利益は11.6%減の計画。前回の10.8%減より減少幅が拡大した。回答企業からは米国の通商政策の影響を織り込む形で利益計画を下方修正したとの声が出た。
<企業の物価見通し、ほぼ変わらず>
企業の物価見通し(全規模・全産業)は前回とほぼ変わらなかった。1年後、3年後、5年後がいずれも前年比プラス2.4%。5年後は前回を小幅に上回り、過去最高となった。
販売価格判断DIは大企業で製造業・非製造業ともに低下した。製造業はプラス24で前回対比1ポイント低下。非製造業は7期ぶりの低下となり、前回から6ポイント低下のプラス28。前回は1983年5月の調査開始以降の最高を更新していた。
短観の調査期間は8月27日から9月30日。回収基準日は9月10日で、約7割から回収した。経済の不確実性を高めていた米国の関税措置は4月から計8回の閣僚協議を重ね、7月22日に「相互関税」と自動車関税を15%とすることなどで合意した。
日銀の担当者は、今回の短観について、関税を巡る不確実性がかなり高く影響を織り込みづらかった前回6月短観に比べれば不確実性が後退しているが、「不確実性が晴れたということでもない。(影響が)完全に織り込まれたとはなかなか言いにくい」と話した。
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