- 2025/12/16 掲載
米ワシントン州 「911通報」にAI支援システム導入へ
緊急対応と非緊急対応を識別、人間の通報者支援とAIが協業することで対応強化を目指す
導入されるAIシステム「Cora」は、通報時に人間のディスパッチャーと同時に会話を聴取し、通話内容をリアルタイムで文字起こししながら、聞き逃しがちな質問や重要な情報を提示するなどディスパッチャーを補助する機能を備えている。Sno911側はこのAIをディスパッチャーの代替とするのではなく、人間のオペレーターを支える補助ツールとして位置付けていると説明している。
Aurelianはもともとビジネス予約の自動化から出発した企業であるが、その後AI音声アシスタントの技術を911コールセンター向けに応用し、非緊急の問い合わせや管理的な通話の処理を通じてディスパッチャーの負担軽減を図るシステムの展開を進めてきた。2024年5月のシステム展開以降、AurelianのAIアシスタントは既に12以上の911センターで運用されており、スノホミッシュ郡以外にもテネシー州チャタヌーガやミシガン州カラマズーのセンターでも導入されている。これらの導入例では、AIが非緊急通報を識別して人間のディスパッチャーに転送したり、必要な情報を収集してレポートを作成したりする運用が進められている。
スノホミッシュ郡911は地域内で最も多くの通報を扱うセンターの一つであり、年間約85万件を超える通話に対応している。AI導入によりディスパッチャーが緊急事態対応に集中できる時間を増やし、非緊急の問い合わせ処理を効率化して応答時間の改善を図る狙いがある。AIによるリアルタイム文字起こしや支援提示は、特にアクセントや言語の違いなど多様な通報者とのコミュニケーションにおいても役立つ可能性があるとされているが、同時にシステムの誤認識や偏りへの対応など、現場からはフィードバック収集が重要であるとの指摘も出ている。
米国の911サービス全体をみると、人員不足や高い離職率が長年の課題となっており、AIはこうした課題に対する一つの技術的解決策として注目されている。専門家らは、AIを緊急通報対応に導入することで通訳やデータ解析、優先度判定などの支援が可能になり、従来の応答プロセスを効率化できると評価する一方で、AIの誤動作、バイアス、セキュリティリスクなどのリスク管理も重要になるとの指摘がある。これらの技術はまだ発展途上であり、適切なガイドラインと人間による監督が不可欠との声も広がっている。
スノホミッシュ郡のAI導入は、こうした背景の中でAIを活用した最先端の緊急通報支援事例の一つとして位置付けられている。導入後の評価や運用実例は、他の自治体や911センターにおけるAI活用のモデルケースとなる可能性があり、安全性や効率性のバランスをどのように取るかが今後の注目点となる。最終的なシステムの有効性と課題は、現場からのフィードバックと継続的な改善プロセスを通じて明らかになる見込みである。
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