- 2025/10/15 掲載
アングル:高値警戒くすぶるAI株、ディフェンシブグロースで脚光 2つの「地雷」も
[東京 15日 ロイター] - AI(人工知能)関連株の人気が継続している。高値警戒感がつきまとうものの、政治や景気に左右されにくい上、成長期待も継続する「ディフェンシブ・グロース」株と位置付ける声も出てきている。一方、株高をくじきかねない2つのリスク要因も意識されており、目配りは必要になりそうだ。
政局や米中摩擦への警戒感があった15日の東京市場で日経平均は、一時900円を超える「意外高」となった。けん引役は半導体関連を含むAI関連の銘柄群だ。オランダの半導体製造装置メーカー、ASMLの決算を控える中、午前には先取りする動きが観測され、午後には決算内容を好感し一段高となった。
日経平均の寄与度上位にソフトバンクグループやアドバンテスト、東京エレクトロンが入り、いずれも後場に上げ幅を拡大。日経平均終値の825円高のうち、3銘柄で半分に近い370円の押し上げに作用した。
ASMLが15日発表した第3・四半期の受注額は市場予想を上回った。「台湾積体電路製造(TSMC)の着実な投資拡大と、インテルの投資意欲の改善が背景にあるとみられる」と岩井コスモ証券の斉藤和嘉シニアアナリストは指摘する。
あすにはTSMCの決算発表を控えているが、ASMLの決算などを踏まえると「着実な設備投資が見込まれ(製造装置メーカーなど)関連株の業績期待は継続しそうだ」との見方を斉藤氏は示す。
<ショック時の復元力>
「AI関連株にはディフェンシブ・グロースの性格がある」とニッセイ基礎研究所の井出真吾チーフ株式ストラテジストはみている。
AI関連株は、ポジティブなニュースが報じられる度に株価を引き上げてきた。米国のアマゾンドットコムやマイクロソフトなど大規模なクラウドデータセンターを運用する企業の継続投資や、ソフトバンクG、オープンAI、オラクルがAIインフラに最大5000億ドルを投じる「スターゲート」計画などへの期待が織り込まれている。
一方、こうしたAI需要の拡大は産業全体のデジタル化や効率化を支える構造的なトレンドであり「景気循環に左右されにくい」と井出氏は話す。ショック的な材料があれば、指数売り圧力もあって全体相場につれ安となり得るが、その後の復元力に期待できるとして「ショックで下押しした場合、押し目を拾いやすく、資金の逃避先になり得る」(井出氏)という。
例えば昨年8月5日の急落から、戻りの節目となった16日までの8営業日の値動きを見ると、日経平均が21%高だった一方、ソフトバンクGは32%高、アドバンテストは25%高、東京エレクトロンは31%高、フジクラは79%高と、指数を軒並みアウトパフォームした。
<警戒される「地雷」>
「AI投資は力強く、当面は成長モメンタムは変わらない」と岩井コスモの斉藤氏はみている。一方、市場では、大きく2つのリスクも意識されている。そのひとつは「地政学的リスク」だ。米中摩擦の応酬の中で、双方からネガティブ材料が飛び出した。
中国は9日、レアアース関連の加工技術への規制を拡大し、無許可で海外企業と協力することを禁止する輸出管理強化を発表。海外の防衛・半導体関連企業への輸出を制限する方針を明確にした。レアアースは各社在庫を確保し、すぐには影響はないとみられているが、製造装置や周辺の装置で利用されてもいる。
一方、トランプ米大統領は10日、11月1日付で中国からの輸入品に100%の追加関税を課すと表明、全ての重要な米国製ソフトウエアの輸出規制もあわせて導入すると明らかにした。実施されれば、中国の半導体企業は新規の半導体設計のためのソフトが使えなくなり、生産計画に想定との乖離が生じて製造装置の販売にも影響が出るリスクがある。
岩井コスモの斉藤氏は「(地政学リスクは)地雷のようだ。突然ニュースが入ってこないか目配りが必要」と話す。
もうひとつが株価のバリュエーションの高さだ。米エヌビディアの株価収益率は51倍、アドバンテストは57倍となっている。一時期よりは控えめではあっても、市場では高水準にあるとの認識はつきまとう。
ニッセイ基礎研の井出氏は、今後も業績が拡大するとの期待が背景にある上、米国で利下げ期待が継続する中では、高めのバリュエーションも許容され得るとみている。一方、それだけに「米利下げ期待の後退がリスクになる」と話す。
足元では、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が14日の講演で、労働市場の弱さにも配慮する必要があるとの認識を示した。市場の利下げ期待は後押しされ、半導体株の追い風になった側面もある。
今後は「関税影響が米消費者物価にどの程度、影響してくるかには注意が必要だろう」とニッセイ基礎研の井出氏は話している。
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