• 2025/10/24 掲載

米パラマウント、ワーナー・ブラザーズ買収で最有力か 資金力や政治力で

ロイター

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Zaheer Kachwala Harshita Mary Varghese Aditya Soni

[23日 ロイター] - 米メディア大手ワーナー・ブラザーズ・ディスカバリー(WBD)を買収する企業として、デービッド・エリソン氏が率いる同業パラマウント・スカイダンスが最有力とみられている。アナリストはその理由として、パラマウントの資金調達力や米政界との結び付きを挙げている。

メディア大手パラマウント・グローバルと映画制作会社スカイダンス・メディアが今年8月に合併して誕生したパラマウント・スカイダンスは、「HBO」や「ワーナー・ブラザーズ・スタジオ」、契約者が1億2000万人を超える動画配信部門などを傘下に抱えるハリウッドの有力資産であるWBDの買収を目指している。

WBDは21日、パラマウントがWBDを600億ドルで買収する提案を拒否した。ただ報道によると、WBDは身売りする意向を示しており、メディア大手コムキャスト、動画配信サービス大手ネットフリックス、アップルといった企業がWBD買収に関心を示している。

<推計企業価値は740億ドル>

バンク・オブ・アメリカのアナリスト、ジェシカ・ライフ・エールリッヒ氏はWBDが身売りする場合の売却価格を1株当たり30ドルと推計。この場合、同社の企業価値は740億ドルと評価される。この価格では、一部の買い手候補は退く可能性があるが、デービッド・エリソン氏にとっては手の届く範囲内だ、とアナリストは話している。同氏の父親である(IT大手オラクル創業者の)ラリー・エリソン氏は約3300億ドルの純資産を持つ世界で2番目の大富豪だ、

アップルは今年6月末時点の手元資金が363億ドルで、WBDを買収する資金は容易に調達できるとみられる。だがアップルは歴史的に大規模な買収を避けてきた経緯がある。アップルがこれまでに実施した最大の買収はヘッドフォンメーカーのビーツで、買収額は30億ドルだった。

ネットフリックスは手元資金が約93億ドルで、これまでに10億ドルを超える規模の買収は実施していない。コムキャストは97億ドルの手元資金を保有しているが、WBDを買収する場合には多額の資金を借り入れるか、外部のパートナーと組んで買収する必要がある。

PPフォーサイトのアナリスト、パオロ・ペスカトーレ氏は、WBD買収では「パラマウントが最有力のようだ」と述べた。

<部分買収か全体買収か>

パラマウントとは異なり他の企業は、WBD全体の買収よりも部分的な買収に関心を示す公算が大きい。WBD全体を買収すれば、買い手は約350億ドルの債務や低迷しているケーブルテレビ事業も抱え込むことになる。

イーマーケターのアナリスト、ロス・ベネス氏は「映画スタジオはネットフリックスとアップルにとっては理にかなうだろう。テレビネットワーク事業はコムキャストがスピンオフ(分離・独立)する予定のケーブルテレビ事業と整合性が取れる一方、映画スタジオは(コムキャスト傘下の)NBCユニバーサルには有意義だろう」と話した。

ネットフリックスのテッド・サランドス共同最高経営責任者(CEO)は21日、同社は伝統的なテレビネットワークの買収には興味がないと表明したが、映画スタジオには言及しなかった。

アップルもケーブルテレビ資産の買収にはほとんど意欲を示していないが、ワーナー・ブラザーズの豊富な映画作品やテレビドラマは、「アップルTVプラス」を補完する有力なコンテンツとなる。

一方でコムキャストは、不振のケーブルテレビ事業をスピンオフすることで、テーマパークと動画配信、中核のNBCユニバーサルの映画・テレビ事業に重点を絞り込む戦略を進めている。コムキャストがワーナー・ブラザーズを買収すれば、ユニバーサルのテーマパークが「DCコミックス」や「ハリー・ポッター」といった有力コンテンツを利用可能になるため、戦略を深く追求することができる。

<トランプ氏との結び付き>

デービッド・エリソン氏は父親のラリー・エリソン氏がトランプ米大統領と深く結び付いているため、WBD買収では他の買い手候補よりも有利な立場にある。ラリー・エリソン氏は以前から共和党への巨額の献金者であり、ハイテク企業の経営者としては珍しく昨年11月の米大統領選前から公然とトランプ氏を支持していた。

こうした状況は、パラマウントがWBDを買収した場合に規制当局が抱く懸念を和らげるのに役立つ可能性がある、とアナリストは話している。パラマウントがWBDを買収すれば、デービッド・エリソン氏が大手映画スタジオ2社を手中に収めるほか、米国のケーブルネットワークのかなりの部分を支配することになる。

ロンドン大学ゴールドスミス校の戦略的コミュニケーション・ジャーナリズム研究室責任者、クレア・ボーン氏は「誰が企業全体もしくは企業を2分割してその両方を買収するにせよ、現在の米政権の承認を得る必要がある」と指摘。「その場合、エリソン親子が極めて容易に有利な立場を確保するだろう。彼らは政権に非常に近いからだ」と語った。

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