• 2026/01/20 掲載

マクロスコープ:春闘スタートへ、賃上げ率5%も視野 生活実感改善に円安の壁

ロイター

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Kentaro Sugiyama

[東京 20日 ロイター] - 経団連は20日、2026年の春闘に臨む基本指針を公表し、「賃上げの力強いモメンタムのさらなる定着が必要」との見解を示した。専門家からは、定期昇給分を含む賃上げ率が3年連続で5%台に達するとの観測が出ている。一方、物価上昇を考慮した実質賃金はマイナスが続いており、2月の衆院選では物価高対策と消費税の扱いが焦点になっている。補助金や減税など痛みの緩和に議論が偏るようだと、財政不安を起因とする円安と物価高の悪循環から抜け出すのは困難だ。

今年の春闘賃上げ率は昨年夏時点で4%台後半が市場のコンセンサスだったが、米国の関税措置による影響が一部にとどまる見通しとなり、企業収益全体が大きく下振れするとの懸念は後退してきた。人材の確保や定着を重視する企業動向を背景に、前年並みの賃上げが実施されるとの見方が多い。

日銀が12月に利上げに踏み切ったのも、本支店を通じたヒアリング調査などから、賃金上昇の持続に一定の確信を得たことがあるとみられる。

春闘は27日に開催される経団連と連合のトップ会談をもって事実上スタートする。連合ベースの賃上げ率は24年に5.10%、25年に5.25%となったが、みずほリサーチ&テクノロジーズの井上淳・上席主任エコノミストは「高水準の賃上げを継続し得る環境は整っている」とし、26年についても5.2%程度の妥結を予想する。

もっとも、賃上げを巡る議論の軸足は変化してきている。みずほリサーチの井上氏は「焦点は賃上げの有無から、実質賃金が上昇するような賃上げになるかに移ってきている」と指摘する。過去2年の春闘では高水準の賃上げが実現したものの、物価上昇に追いつかず、多くの家計が暮らし向きの改善を実感できていなかった。

こうした問題意識のもと、連合は26年の春闘方針に「実質賃金の持続的な上昇を伴う賃上げノルムの確立を目指す」と明記。一方、経団連も20日に公表した「経営労働政策特別委員会報告」で、「多くの働き手が賃金アップをより実感できるよう、実質賃金の安定的なプラス化の実現が社会的に求められている」と指摘するなど、労使で目指す方向性は一致している。

同日会見した経団連の長澤仁志副会長(日本郵船会長)は「事前の民間調査では5%前後の数字が出ている。そのあたりに落ち着いてくれたらありがたい」と述べ、「政府が講じる物価対策などである程度物価上昇率が抑えられるのであれば、間違いなく実質賃金はプラスに転じるはず」との見方を示した。

<円安進行で痛み>

家計のゆとりは、賃金と物価の動きがどうかみ合うかに左右される。2月の衆院選を前に、物価高の要因として為替市場の円安が再びクローズアップされている。

高市早苗政権が掲げる「責任ある積極財政」は、市場の一部に財政運営への警戒感を生み、為替相場は一時、1ドル=160円近辺まで円安が進んだ。26年は食品価格高騰の一服や物価高対策の効果が出るとみられているものの、円安の長期化による輸入物価の上昇がインフレ圧力となりかねない。

立憲民主党と公明党の衆院議員が合流する新党「中道改革連合」は基本政策で、「行き過ぎた円安を是正し、食料品やエネルギーなど生活必需品の物価を引き下げる」とする方針を明記。高市首相は19日、衆院解散について記者会見し、軽減税率が適用されている飲食料品を2年間限定で消費税の対象としないことについて「検討を加速する」と表明した。

金融市場の専門家はこの現状をどうみているのか。みずほ銀行の唐鎌大輔チーフマーケット・エコノミストは、インフレ抑制に向けて望ましいのは「円安の反転だ」と指摘する。そのためには「市場に根付いた拡張財政と金融緩和の継続期待を修正できるかがカギになる」と述べた。

唐鎌氏は「高市政権発足後の3カ月で行われたのは、日銀の利上げや比較的健全な予算編成だ。政策当局の実際の対応をありのまま伝え続ければ、市場の期待はいずれ変わる」と話す。「責任ある積極財政という言葉は捨てられなくても、インフレを容認しているわけではない。財政は前年比で見れば緊縮的で、日銀も利上げしているという説明を地道に重ねていくしかない」とした。

ある経済官庁幹部は「この問題にシルバーブレット(特効薬)は存在しない。仮に即効性のある処方箋があれば、歴代政権ですでに実行されていたはずだ」という。その上で「賃金が上がってきていることをどのようなナラティブ(物語)にできるかが重要だ。現役世代を重視する政策姿勢を明確にし、『これから良くなる』との期待をつなぎ留められるかが問われている」と述べた。

(杉山健太郎 編集:橋本浩)

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