- 2020/08/25 掲載
8月の企業資金調達が10年ぶり高水準、コロナで夏休みなし
リフィニティブのデータによると、新規株式公開(IPO)やハイイールド債発行による調達額は655億ドル。8月としては、少なくとも過去10年で最も多い。7月は986億ドル。6月は1265億ドルで20年ぶりの高水準だった。
背景には、新型コロナウイルス禍を受けて各国政府・中銀が景気支援策を打ち出していることがある。
加えて、例年なら8月は夏休みだが、コロナ規制で旅行などできず、銀行員や投資家が仕事をしていることも、案件増加につながっている。
シティグループのアジア債券シンジケート部門の幹部、リシ・ジャラン氏は、8月の活況の主な要因は金融市場の流動性とした上で、パンデミックがディールのプロセス加速に一役買ったと指摘した。
「人々は現在の環境に非常に自然に適応した。ロードショーはオンライン形式に切り替わり、ショートノーティスのディールにも対応している」という。
アジアでは8月に入りIPOで253億ドル相当が調達されている。リフィニティブのデータによると、8月としては4年ぶりの高水準。
アジアで過去3週間に発行された米ドル建て債券は約130億ドルで8月としては3年ぶりの高水準。
UBS・APACのグローバルバンキング責任者ガエタノ・バッソリーノ氏は「システムの流動性が高く、それが活動を促し、それによって投資家がシステムに十分なサポートがあると納得し、保有するキャッシュを再び注入する自信回復につながっている」と話す。
穀物商社アーチャー・ダニエルズ・ミッドランドは今月、シンガポールのウィルマーの株および債券の売却で総額8億5000万ドル調達した。コーポレート・アドバイザーからは、これまでの8月では考えられないとの声が出ている。
スタンダード・チャータード(香港)のアジア債券シンジケート責任者アラン・ロック氏は「夏場は大体、何人かのキーパーソンが休みに入ることがリスクで、いくつかの案件に影響を与える可能性もある。しかし今年は違う。ほとんど全員が仕事をしている」と述べた。
リフィニティブのデータによると、世界的に今年、株式発行や債券の売り出しが多いセクターはハイテクやヘルスケアなどで、旅行サービスやホテル、小売りは低迷している。
ベンチャーキャピタル会社ランウェイ・グロース・キャピタルのデビッド・スプレング最高経営責任者(CEO)は、企業の資金調達意欲は旺盛で今後数四半期にかなりのM&A(合併・買収)案件が出てくると予想する。
「買われる側でなく買う側になりたい向きは強固なバランスシートの確保を望む。また身売りを迫られる状況になっても、可能な限り強い立場で交渉に臨みたいと考えるだろう」と述べた。
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