- 2021/04/20 掲載
アングル:中国で投機筋の融資不正利用、不動産過熱の温床に
深センや上海を含めた4つの第1級都市について金融規制当局が行った調査によると、今年3月以降に不適切な形で不動産購入に使われた銀行融資は8億7780万元(146億1800万円)相当とされる。
アナリストは、これが氷山の一角にすぎず、中国全土で見れば金額はもっと大きくなる可能性があると話す。香港のBOCOMインターナショナル(交銀国際)の調査責任者ホン・ハオ氏は、昨年の不動産取引と融資量などから推計すると「(不正利用されている融資の)総額は第1級都市と第2級都市合計で数千億元になってもおかしくない」と述べた。
中国政府は企業支援のため、銀行融資の道が開かれた状態を維持することを望んでいる。一方で政府は、融資が不正使用されないことも確実にしなければならない。そうしたジレンマを浮き彫りにする事態が起きている。
<投機抑制に手こずる>
大都市の住宅価格は昨年から高騰が続いており、これに拍車を掛けているのが、向こう見ずな投機だ。政府は今のところ投機抑制に成功していない。多くの投機取引は銀行が承認した法人向けローンが原資になっている。
人民銀行(中央銀行)の金融市場責任者Zou Lan氏は12日のメディアとの懇談で「一部の都市、すなわち市場が過熱気味で住宅価格上昇期待が強く、投機取引が高水準に達している都市では、住宅購入に法人向け銀行ローンが詐欺的に利用されている事例がある。中には組織的犯罪がかかわっている案件もある」と説明した。
同氏は「こうした動きを封じ込めることが直ちにできないと、不動産規制政策に影響を及ぼすだけでなく、実体経済、特に中小企業にとって必要な融資資金が搾り取られてしまう」と警鐘を鳴らした。
人民銀行と住宅都市農村建設省はいずれもロイターのコメント要請に回答しなかった。
<サイト上に告発者>
大都市の当局は、住宅購入に関して買い手に最長5年の居住資格があることや、頭金として販売価格の少なくとも3割を現金で用意することなど、面倒で厳しい条件を課している。
しかしそうした条件をすり抜けるためのさまざまな手が考え出されてきた。例えば昨年、身元不明のある女性はメッセージアプリ、微信(ウィーチャット)の3000人超のグループ向けに、深センの物件を購入する共同投資家1人を募集する広告を出した。この「利害共有者」は、700万元の物件の頭金30%の一部を支払い、女性とともに残りの代金490万元を借り入れる。その後女性はペーパー企業を設立して物件を担保に銀行に法人向けローンを申請し、住宅ローンより金利が低いローンで先に借りた490万元を返済する。最後に2人は購入時より高い値段で物件を売却して、残っているローンをすべて清算し、女性は売却資金の5%を受け取るという仕組みだ。
これらの手口の概要を示すウィーチャットの履歴上のスクリーンショット102枚が4月上旬、匿名の告発者によってミニブログサイトの微博(ウェイボ)に公開された。
この告発者はロイターに「こうした手口をしばらく前からさらしている。運営側がアカウントを閉鎖したり停止したりしてしまうので、現在のアカウントはウェイボで3つ目だ。簡単に行く話ではないことは承知している」と語った。
深セン当局は、この告発者の投稿で描写されたウィーチャットのグループの動きについて調査に乗り出すと表明している。
(Lusha Zhang 記者、Ryan Woo記者)
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