- 2021/04/28 掲載
焦点:新興国通貨が反落、ワクチン接種でユーロの輝き増す
ここ数週間、ドルは総じて軟調で、ユーロは26日、2カ月ぶりに1ユーロ=1.21ドルを上回ったが、JPモルガンの新興国通貨指数は年初から約2%下落している。
通常、ドル安は新興国通貨の追い風となるが、新型コロナの感染拡大後は、こうした相関性が低下しつつある。
新興国は今年、対ロシア制裁、中南米諸国の選挙、トルコの金融政策の混乱など数々の問題を抱えている。インドやブラジルなどでは新型コロナの感染が急増。こうした問題が新興国通貨に影を落としている。
ゴールドマン・サックスの新興国トレーディング担当グローバルヘッド、クナル・シャー氏は「為替市場で起きている最大の現象の一つは欧州のアウトパフォーマンスだ」と指摘。
「新興国は国によって新型コロナからの回復度が異なり、新興国通貨全体に共通するテーマがない。このため、一つの資産クラスとしての新興国通貨に注目する投資家は少なく、個別国の状況に注目が集まっている」と述べた。
年初に新興国通貨の上昇を主導していた通貨は、新型コロナの感染拡大を受けて今月は下落している。インドルピーは月間ベースで2020年3月以降で最大の下げを記録する見通し。インドの新規感染者は26日に過去最多を更新した。
モルガン・スタンレーのストラテジスト、ジェームズ・ロード氏は、経済成長見通しやファンダメンタルズを踏まえると、新興国通貨を買う理由は特にないと指摘。同社は新興国通貨をニュートラルとしている。
確かに、全ての新興国通貨が下落しているわけではない。経済発展度が高い新興国はワクチン接種が進んでおり、チリ、イスラエルなどの国に強気な見通しを示す投資家は多い。イスラエルでは16歳を超える市民・居住者の約81%がワクチン接種を完全に終えている。
第2・四半期の新興国の経済成長率が米国を上回ることは織り込み済みで、新興国通貨は現在の下落局面が始まる前から割高感があった。
対照的に、欧州ではドイツやスペインなど一部の国でワクチン接種のペースが増すなど、ここ数週間で回復の兆しが強まっているようだ。投資家は年初の時点で、すでにユーロ圏経済に慎重な見方を示していたため、足元のワクチン接種加速と欧州の利回り安定を受けて、投資対象としての魅力が高まっている。
4月20日までの週のユーロのネットポジションは、1月以来初めて大幅に増加。投機筋は今年、ユーロのロングポジションを一貫して削減していた。
一方、ブラジルレアルのショートポジションは昨年3月以降で最高の水準付近にある。
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