• 2021/05/28 掲載

NEC、AIによる内視鏡画像解析でバレット食道の腫瘍検知技術を開発

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 NECは、AIによる内視鏡画像解析で、バレット食道に発生する腫瘍を検知する技術を開発し、世界で初めて製品として欧州の安全規格であるCEマーク表示の要件に適合しました。今回、AI診断支援医療機器ソフトウェア「WISE VISION(TM) Endoscopy」に本技術を搭載し、本年から欧州において販売を開始します。

 本ソフトウェアは、既存の内視鏡機器に接続することで、内視鏡検査時に撮影する画像からその場でAIにより腫瘍候補を検出し、内視鏡医による腫瘍の発見を支援します。

 バレット食道は、食道の粘膜が胃の粘膜に似た組織に置き換えられてしまう病気であり、バレット食道になると食道がんになる危険性が高くなるとされています。バレット食道の有病率は世界人口の約1%、胃食道逆流症を持つ人では約7%に上り(注1)、発がんリスクは30~40倍に上ると言われています(注2)。バレット食道に発生する初期の腫瘍を摘除することで、進行がんの発症を防ぐことができるため、罹患者には定期的に内視鏡検査を受けることを推奨されています。初期の腫瘍は内視鏡により視認できる病変としての特徴が軽微であるためその発見が難しく、欧米では無作為に行う生体検査(ランダム生検)により腫瘍の検出を行うのが標準的な検査方法です(注3,4)。しかし、ランダム生検はコストと時間がかかり、患者の負担も大きく順守率が30~51%と推測されています(注5,6,7,8)。その結果最大40%のがんが見逃されている可能性が指摘されています(注5)。

 この課題解決に貢献するため、NECは欧州消化器内視鏡学会(European Society of Gastrointestinal Endoscopy) 研究委員会委員長であるPradeep Bhandari(プラディープバンダリ)教授(英国)と連携し、100万枚以上のバレット食道の内視鏡画像を専門医の所見と併せてAIに学習させることで、腫瘍候補を検査中に検出するAI技術を開発し、製品としてCEマーク表示の要件に適合しました。開発にあたってはNECのAI技術群「NEC the WISE」(注9)の一つであり、米国国立標準技術研究所(NIST)において高い評価(注10)を獲得した顔認証技術を応用しています。臨床評価の結果、本技術を搭載したAI診断支援医療機器ソフトウェアは90%以上の腫瘍を検出することができました(注11)。これにより、腫瘍を見逃す割合を減らすとともに、内視鏡医の負荷軽減に貢献します。

 なお、本技術における研究発表は英国消化器病学会(British Society of Gastroenterology、以下BSG)のGut Awardを受賞し、BSG Campus内のプレナリーセッション(全体会議)で発表されました。また、欧州消化器病学会(United European Gastroenterology) 2020では内視鏡に関する最優秀研究発表に選出されました。

 今回の発表にあたり、Pradeep Bhandari教授から以下のメッセージを頂戴しております。

 「AI技術の世界的リーダーであるNECが内視鏡分野に参入し、消化器病変の検知と対処を助ける「WISE VISION(TM)」を開発したことをうれしく思っています。バレット食道腫瘍は非常に平坦で、複数回の生検を行っても内視鏡検査中に見逃されやすいものです。NECと共同で「WISE VISION(TM)」のバレット食道腫瘍検知AI技術を開発しました。これはバレット食道腫瘍検知としてCEマークを取得した世界初のAI技術であり、NECが実用化したスピードに非常に感銘を受けました。「WISE VISION(TM)」は、非常に平坦で捉えにくいバレット食道病変を検知でき、且つ、ほとんどの内視鏡医よりも先に検知します。「WISE VISION(TM)」は、バレット食道病変の内視鏡での検知と対処に革命をもたらすものです。内視鏡医たちはこの新しい"WISE"な時代の幕開けを楽しみにしていることでしょう。」

(注1)Marques de Sa I, Marcos P, Sharma P, Dinis-Ribeiro M. The global prevalence of Barrett's esophagus: A systematic review of the published literature. United European Gastroenterol J. 2020;8(9):1086-1105. doi:10.1177/2050640620939376

(注2)Sharma P. Clinical practice. Barrett's esophagus. N Engl J Med. 2009 Dec 24;361(26):2548-56. doi: 10.1056/NEJMcp0902173. Erratum in: N Engl J Med. 2010 Apr 15;362(15):1450. PMID: 20032324.

(注3)Weusten B, Bisschops R, Coron E, Dinis-Ribeiro M, Dumonceau JM, Esteban JM, Hassan C, Pech O, Repici A, Bergman J, di Pietro M. Endoscopic management of Barrett's esophagus: European Society of Gastrointestinal Endoscopy (ESGE) Position Statement. Endoscopy. 2017 Feb;49(2):191-198. doi: 10.1055/s-0042-122140. Epub 2017 Jan 25. PMID: 28122386.

(注4)ASGE STANDARDS OF PRACTICE COMMITTEE, Qumseya B, Sultan S, Bain P, Jamil L, Jacobson B, Anandasabapathy S, Agrawal D, Buxbaum JL, Fishman DS, Gurudu SR, Jue TL, Kripalani S, Lee JK, Khashab MA, Naveed M, Thosani NC, Yang J, DeWitt J, Wani S; ASGE Standards of Practice Committee Chair. ASGE guideline on screening and surveillance of Barrett's esophagus. Gastrointest Endosc. 2019 Sep;90(3):335-359.e2. doi: 10.1016/j.gie.2019.05.012. PMID: 31439127.

(注5)Kariv R, Plesec TP, Goldblum JR, et al. The Seattle protocol does not more reliably predict the detection of cancer at the time of esophagectomy than a less intensive surveillance protocol. Clinical gastroenterology and hepatology : the official clinical practice journal of the American Gastroenterological Association. 2009 Jun;7(6):653-8; quiz 06. PubMed PMID: 19264576. Epub 2009/03/07. eng.

(注6)Shaheen NJ, Falk GW, Iyer PG, Gerson LB, American College of G. ACG Clinical Guideline: Diagnosis and Management of Barrett’s Esophagus. Am J Gastroenterol. 2016;

(注7)Spechler SJ, Sharma P, Souza RF, Inadomi JM, Shaheen NJ. American Gastroenterological Association technical review on the management of Barrett’s esophagus. Gastroenterology. 2011 Mar;140(3):e18-52; quiz e13.

(注8)Abrams JA, Kapel RC, Lindberg GM, Saboorian MH, Genta RM, Neugut AI, et al. Adherence to Biopsy Guidelines for Barrett’s Esophagus Surveillance in the Community Setting in the United States. Clin Gastroenterol Hepatol [Internet]. 2009 Jul 1 [cited 2018 Nov 16];7(7):736 42.

(注9)「NEC the WISE」(エヌイーシー ザ ワイズ)はNECの先端AI技術群の名称です。 "The WISE"には「賢者たち」という意味があり、複雑化・高度化する社会課題に対し、人とAIが協調しながら高度な叡智で解決していくという想いを込めています。 プレスリリース NEC、AI(人工知能)技術ブランド「NEC the WISE」を策定
https://jpn.nec.com/press/201607/20160719_01.html
NECのAI https://jpn.nec.com/ai/

(注10)米国国立標準技術研究所(NIST)による顔認証技術の性能評価
https://jpn.nec.com/press/201910/20191003_01.html

(注11)ESGE2021で学会発表

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