- 2021/06/17 掲載
焦点:近づくFRBのテーパリング、高ボラに身構える債券投資家
FRB当局者は16日、これまでの想定よりも早く、2023年に2回の利上げの可能性があるとの見方を示した。パウエルFRB議長は連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見で、テーパリング(量的緩和の縮小)に関し、FRBの目標達成に向けた進展について議論したと説明。「今後のFOMCで引き続き検証していく」と述べた。
ジャナス・ヘンダーソンのグローバル債券ポートフォリオマネジャー、ジェイソン・イングランド氏は「FRBはノイズ(雑音)の多くなる夏季のデータを様子見する姿勢を明確にした」と指摘。各中銀首脳が集まる8月下旬のジャクソンホール会合にかけて債券市場ではボラティリティーが高まると予想する。
テーパリングの具体的な時期を巡る問題は金融市場の気掛かり材料となっている。16日は米株が下落し、ドルが上昇。米国債利回りは上昇した。
一部の市場参加者はインフレが予想以上に強まるなどの兆候が見られれば、極端な反応が生じる可能性があると指摘。パウエル議長は、政策当局者は「ビハインド・ザ・カーブ(後手に回る)」の状況に直面していないと述べた。
リームズ・アセット・マネジメントのマネジングディレクター、トッド・トンプソン氏は、実質金利が依然としてマイナスになっていることを考慮すると、過去最高水準となっている求人件数に伴う賃金圧力が多くの市場参加者の想定よりも早い行動をFRBに強いるだろうと指摘。「経済が急速なペースで拡大する中、マイナスの実質金利は現実とずれがあり、(利上げを通じて)調整される必要がある」と話した。
10年物国債は実質金利ベースでマイナス0.75%となっている。
PIMCOの北米担当エコノミスト、ティファニー・ワイルディング氏は今回のFOMCのメッセージについて、FRBは「景気下振れリスクからインフレ期待の上振れリスクに管理態勢をシフトしている」と指摘。「これから分かるのは、目標を上回るインフレに対するFRBの寛容度はわれわれの想定よりもやや低い可能性があるということだ」と述べた。
<「タントラム」は見込まず>
FRBが量的緩和策の縮小を示唆して債券投資家の大規模なろうばい売りを引き起こした2013年のいわゆる「テーパー・タントラム(かんしゃく)」の再来は見込まれていない。
ブラックロックのグローバル債券部門最高投資責任者(CIO)、リック・リーダー氏は、テーパリングが「景気や市場に明白なストレス」を引き起こすとは考えていないと指摘した。
前出のワイルディング氏もテーパー・タントラムの再発は見込んでいないとし、「早ければ9月にもテーパリングのアナウンスのようなもの」があるかもしれないと語った。
リーダー・キャピタルのジョン・レカス社長は、来年のどこかの時点で米景気回復が衰える可能性が懸念されると指摘。年末に「より厳しい経済」になっているかもしれないとした上で、「FRBの様子見アプローチは理にかなっていると思う」と述べた。
(David Randall記者、Ira Iosebashvili記者、Megan Davies記者、Additional reporting by Karen Brettell記者)
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