- 2021/07/05 掲載
アングル:強い米雇用統計、市場にくすぶる早期緩和縮小への警戒感
米労働省が2日発表した6月の非農業部門雇用者数は前月比増加幅が85万人と、5月の58万3000人から拡大。平均時給も前月比0.3%増加し、前年比では5月の1.9%増から3.6%増まで伸びが高まった。
こうした中で市場はいったん前向きに反応し、株価が最高値を更新した一方、米国債は利回りが小幅低下(価格は小幅上昇)。ただ、投資家は、力強い景気回復と賃金上昇によってFRBが想定より早く金融緩和の巻き戻しに動かざるを得なくなるのではないかとの懸念は、ほとんど払しょくされていないと話している。
FRBが6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)でタカ派姿勢にシフトし、市場が数日にわたって混乱した後だけに、今月のFOMCや8月に開催されるジャクソンホールの年次経済シンポジウムをにらみながら、市場には重苦しい雰囲気が続く可能性がある。
TDセキュリティーズのグローバル金利戦略責任者、プリヤ・ミスラ氏は「市場は板挟み状態になっていると思う。データが改善すれば普通なら金利上昇を意味するはずだが、FRBがより早期に緩和から手を引くことを迫られるとすれば、それは経済成長を鈍化させてしまう」と解説した。
実際、最高値を更新した株式市場にも、注意してみれば警戒すべき兆しが幾つかあると一部のアナリストは指摘する。例えば、感染力の強い新型コロナウイルス変異株(デルタ株)の広がりに対する心配が、旅行や娯楽関連株を圧迫している。
また、この数週間、値上がり銘柄がごく一部に集中しているのは、市場全般への信頼が弱まっている証拠だとの見方が聞かれる。インフレ懸念が根強い中で米国債利回りが落ち着いているのも、FRBがよりタカ派的になる可能性が考慮されている表れとも言える。
ブラウン・アドバイザリーの国際債券責任者トム・グラフ氏は「FRBは2023年中に2回という想定より早く、あるいは急ピッチの利上げに乗り出すのではないか。その理由は労働力(の需給ひっ迫)懸念だ。つまり一時的ではない経済過熱局面は恐らく、FRBが認めているよりも近づいている」と述べた。
ブラックロックのグローバル債券最高投資責任者、リック・リーダー氏は今回の雇用統計について「米経済が(特に正規労働者の)需要ではち切れんばかりになっているものの、供給によってだけ抑え込まれているという構図を裏付けている」と語り、FRBが一段とテーパリングに目を向けるはずだとの見方を示した。
(David Randall記者、Kate Duguid記者)
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