• 2021/07/28 掲載

アングル:米長期金利、再び上昇して2%到達との予想がなお市場の大勢

ロイター

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[ロンドン 27日 ロイター] - 米10年国債利回りの2%到達に賭けることに引き続き何の迷いもない――。多くのアナリストや投資家はこう断言し、年末にかけて利回りが再び上昇に転じると見込んでいる。ただ他の資産に混乱は広がらないだろうという。

米国債市場は、米国をはじめ世界全体の経済状況を映し出す重要な指標の1つであるだけでなく、国際金融資本市場の借り入れコストの目安となるため、最近の10年債利回り急低下(価格急騰)は驚がくをもたらした。

利回りを押し下げた主な要因は、景気回復が頭打ちになった上に、幾つかの中銀が新型コロナウイルス対応の大規模緩和を拙速に巻き戻し始めたのではないかとの懸念だ。これで金利上昇を見越していた国債弱気派が不意を突かれ、あわてて買い戻しに動いたことから利回り低下がさらに進んだ。

その結果、米商品先物取引委員会(CFTC)の直近データによると、10年国債の買い持ち規模は6月初め以降で最大規模を記録。今月20日には利回りが1.13%と、3月末につけた直近ピークを約65ベーシスポイント(bp)も下回る水準に下がり、年末1%を予想しているHSBCなど国債強気派が突然、いかにも先見の明があったかのような様相を呈した。

しかしロイターが取材した資金運用担当者や銀行関係者23人のうち15人は、10年債利回りは2%に向けてまた上がるというのが基本シナリオだと回答した。他の5人は年末の利回りを1.5%前後かそれより低いと述べ、残る3人は見通しを示していない。

ゴールドマン・サックスの米金利ストラテジスト、プラビーン・コラパティー氏は、年末の利回りは1.9%に達するとの予想を維持。「現在より65bpも高い水準を想定するとは何と大胆な、と思われるかもしれない。だが率直に言って、今の市場は均衡点からかなり離れた場所にいるとわれわれは考えている」と語った。

コラパティー氏によると、パンデミック発生以前に10年債利回りが1.3%近辺で推移したのは2016年だけで、「恒常的な停滞」とみなされていた当時と現在では環境が非常に異なるという。

投資家の見立てでは、今の利回り水準は、ワクチンが効果を発揮せず、FRBがタカ派方向で政策運営を間違えるという悲観シナリオを反映したものだ。物価上昇率を差し引いた実質利回りは過去最低圏のマイナス1.14%前後に低迷している。

ところがデータからは、先進国経済はパンデミックに伴う落ち込みからの急反発後の減速が緩やかにとどまっていると分かる。またリフィニティブのIBESに基づく米国と欧州の企業の第2・四半期利益は前年同期比でそれぞれ80%と110%の増加が予想される。株価は最高値に迫り、社債のリスクプレミアムは落ち着いたままだ。

ゴールドマンは、感染力の強いデルタ株浸透の影響で世界経済の成長率が0.3ポイント押し下げられると試算する。とはいえロイター調査で示された今年の世界経済成長率予想の6%からすれば、これはごくわずかの下振れでしかない。

バンク・オブ・アメリカの米金利ストラテジスト、マーク・カバナ氏は「われわれが想定する基本的な(経済)状況が大幅に変わったことを示す証拠はまだ目にされていない」と述べ、10年債利回りは1.9%に上昇するとの予想も据え置いている。

<株価や社債はおおむね安泰>

もちろん反対意見も存在する。コメルツ銀行とノルデア・アセットマネジメントは、米10年債利回りの予想を1.5%近辺に引き下げた。HSBCの米金利戦略責任者ラリー・ダイアー氏は、FRBが結局は「ドット・チャート」が示唆する政策金利見通しよりもハト派的な姿勢になると主張し、「FRBが物価上振れを容認するつもりなら、10年債利回りは過去10年の平均である2%より低くなるはずだ」と付け加えた。

一方、大幅な利回り上昇は他の資産クラスにあまりマイナスの影響を与えないとの見方が大勢だ。ブルーベイ・アセット・マネジメントのマーク・ダウディング最高投資責任者は「10年債が2%に向かっても、大きな波乱を巻き起こさないで済む可能性があると思う」と話す。

FRBの緩和縮小に向けた対話がボラティリティーを高めたとしても、基調的な経済の強さが市場を支え、これほど力強い企業収益の流れがある中で株価が大幅に下がるとは考えられないという。

ラッセル・インベストメンツの債券ポートフォリオ管理責任者ジェラード・フィッツパトリック氏は、10年債利回りが1.50-2%に上がるが、動きが緩やかである限り、株価と社債にとってリスクは乏しいとみている。

ゴールドマンのコラパティー氏も同意。「やはり『リフレーション』が十分に健在だと市場が考えるなら、それほど混乱は起きないのではないか。差し引きすればプラスにさえ働くかもしれない」と述べた。

(Yoruk Bahceli記者、Sujata Rao記者)

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