- 2021/09/22 掲載
焦点:日本株押し上げた海外短期勢、長期投資家はまだ「半身」
[東京 22日 ロイター] - 日本株を31年ぶり高値に押し上げた需給面の立役者は海外勢だが、短期筋の先物買いが中心だった。一段高となるには「ロングオンリー(買い持ち専門)」と呼ばれる長期投資家の参入が欠かせないものの、日本企業の競争力向上などはまだみえず、依然として「半身」姿勢の投資家が多い。
<中立スタンス変えない投資家>
「トヨタショック」が日本市場を襲った8月20日の2万6954円を底値に、日経平均株価はわずか3週間で約3800円超、率では14.2%上昇し、約31年ぶり高値となる3万0795円まで駆け上がった。
需給面でけん引したのは海外勢だ。日本取引所グループの投資部門別売買動向によると、8月第4週から9月第2週までの3週間で、外国人投資家は日本株を現物・先物合計で約2兆円買い越した。そのうち先物は1.4兆円で、ヘッジファンドなどの短期マネーが買い手の主体だった可能性が大きい。
一方、欧米の長期投資家は慎重姿勢をまだ完全に崩していない。米パインブリッジ・インベストメンツのグローバル・マルチアセット・ポートフォリオマネージャー、Mary Nicola氏(シンガポール在勤)は日本株について、先行き改善の見込みはあるとしながらも「半導体不足が自動車産業を直撃し、ワクチン接種も現時点では欧米に対して出遅れ感がある」と指摘する。
資産運用世界最大手の米ブラックロックは、日本株の投資スタンスを7月に中立に引き上げて以降変更していない。
同じ米系のインベスコ・インベストメント・ソリューションズの戦術的資産配分責任者、Alessio de Longis氏(ニューヨーク在勤)も「株式には強気。国・地域別では新興国に対して強気だが、日本は中立で変えていない」と言う。
<高値つかみ嫌う国内投資家>
国内の機関投資家からも慎重な意見が聞かれる。
ある国内大手運用会社の株式ポートフォリオマネージャーは、8月下旬以降の株価上昇のピッチが速すぎて買い遅れたと明かす。そのうえで「日本企業の競争力は欧米に水をあけられているが、その点に変化は見られず、また改革のスピードで日本企業が欧米より遅いとの見方にも変わりがない」として、高値圏で買いを入れることには否定的だ。
ただ、今週になり中国の不動産開発大手、中国恒大集団の債務問題に端を発した世界的なリスクオフで日本株も調整局面に入っており、日経平均は3万円の大台を割り込んできた。
日本ではワクチン接種が進む中で国内の新型コロナ感染拡大にピークアウト感が出てきたほか、3月期決算企業の第1四半期決算発表でも総じて企業業績の順調さが確認されている。値ごろ感が生じる水準では国内勢からの買いの手が伸びる可能性もある。
<先行きに期待する声も>
一方、海外の長期投資家の日本株保有比率は依然低く、先行きへの期待を示す声も出ている。
スイスUBSのグローバル・ウェルス・マネジメントのマネジングディレクター、Kiran Ganesh氏(ロンドン在勤)によると、顧客投資家の日本株保有率は概してゼロ─2%程度で、上値余地が大きいという。
Ganesh氏は「日本は我々が今最も選好しているマーケット」とし、自民党総裁選後の財政刺激策への期待、アフターコロナの景気回復からの恩恵、出遅れ感のあったワクチン接種のハイペースでの進捗、をポジティブ材料として挙げる。また、米国株のバリュエーションや中国の規制強化に不安を覚える投資家の資金シフト先としても日本株は適していると指摘した。
独DWSのアジア太平洋地域(APAC)最高投資責任者(CIO)、Sean Taylor氏(香港在勤)は、景気敏感の資本財セクターに妙味があるとの見方を示す。「日本株にもっと強気になれるまであと3カ月程度かかる」としながらも、その前にも、首相交代を材料に上昇する可能性がありそうだと述べる。
米コロンビア・スレッドニードル・インベストメンツのマルチアセット・ポートフォリオ責任者、Anwiti Bahuguna氏(ボストン在勤)は、日本株を7月に買い増したと明かす。「コンセンサスを上回る企業業績にもかかわらず、ワクチンや政治をめぐる混迷から株価は失速していた」と当時を振り返りつつ、最近のワクチン接種進展と政治的逆風の弱まりは日本株のさらなるポジティブ材料だと話している。
(植竹知子 取材協力:佐野日出之 編集・グラフ作成:伊賀大記)
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