- 2021/11/01 掲載
アングル:eスポーツに韓国企業が積極投資、規制緩和も加勢
10代のユンさんは韓国の次世代ゲームプレーヤーの1人。この国のeスポーツ界は瞬く間に発展を遂げ、米ゲーム企業ライアットゲームズが主催する最大イベント、「リーグ・オブ・レジェンド世界大会」が始まった2011年以来で6回も優勝を勝ち取っている。
追い風はさらに強まる見通しだ。韓国は10年前から、16歳以下の若者が深夜から午前6時までの時間帯にコンピューターでオンラインゲームを行うことを禁じてきたが、その法律の廃止が今年8月に発表された。若者はコンピューターの代わりにスマートフォンでゲームをすることが増えている、との共通認識に基づく措置だ。
「法律のせいで随分と困った。ふだん睡眠時間が少ないから、禁止の時間帯には別の勉強をしていた。あの法律がなければ今ごろもっと強くなれていたかもしれない」と語るユンさん。今年は16歳になるので、少なくとも4時間は余計にゲームができるという。
韓国の動きは、世界最大のeスポーツ市場である中国と好対照を成す。中国は8月末、18歳以下の若者がオンラインゲームに費やせる時間を、週わずか3時間へと厳しく制限した。
中国杭州市で来年開かれるアジア大会では、eスポーツが初めて正式種目となる。
eスポーツのプロ養成コースを提供するソウル・ゲーム・アカデミーのパク・セウン副社長は「中国のゲーム規制は、われわれが力を蓄え、再びeスポーツの主導権を握る好機になるかもしれない」と話す。2016年に開講して以降、アカデミーへの1日の問い合わせ件数は30倍に増えたという。
<政府の関心薄く>
将来有望なプロプレーヤー候補を抱え、国際的な地位や関心が高まっているにもかかわらず、専門家によると韓国政府によるeスポーツ産業への支援額は昨年時点で推定17兆9000億ウォン(152億ドル)にとどまっている。
来年の国家予算604兆4000億ウォンのうち、eスポーツおよびゲーム産業向けは671億ウォンだ。ある高官によると、文化体育観光省はアジア大会などの競技を控え、この分野にもっと力を注ぎたい意向を持っている。
大企業や民間の教育機関からは投資が押し寄せている。
即席麺などを手掛ける食品メーカーの農心は昨年、リーグ・オブ・レジェンドに出場するチーム「農心レッドフォース」を結成。既に自社チームを抱える通信大手SKテレコム、起亜自動車、ハンファ生命保険、通信大手KTコープなど大手企業の輪に加わった。
農心Eスポーツのオー・ジファン最高経営責任者(CEO)は「eスポーツ産業は拡大し続けてきたが、政府主導の支援策は弱く、企業のスポンサーシップや民間教育機関が主に産業を引っ張ってきた」と述べた。
オー氏によると、企業はeスポーツが若い世代とつながり、ブランドイメージを高めるための土俵になると考えている。
リーグ・オブ・レジェンド史上最強プレーヤー「Faker(フェイカー)」を擁するSKテレコムのチームT1は先月、eスポーツ・アカデミーを開設した。20週間のコースは学費が560万ウォンもかかるが、申し込みが押し寄せているという。
しかし韓国の学校でeスポーツのプロ選手養成課程があるのは1校のみだ。10代のヨンさんは往復2時間かけて毎日その高校に通っている。
農心のオー氏は、米国や中国に市場規模で劣る韓国では、政府と民間双方によるゲーム人材の育成支援が不可欠だと指摘。「人材に的を絞ることが鍵になる。人材育成のノウハウを蓄積すれば、われわれの強みになるはずだ」と語った。
(Joori Roh記者)
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