- 2021/11/25 掲載
敵対TOB、急転直下「手打ち」=背景に国の働き掛け―新生銀・SBI
国内銀行に対する初の敵対的TOB(株式公開買い付け)として注目されたインターネット金融大手SBIホールディングスによる新生銀行の買収劇は急転直下、「手打ち」に至った。新生銀は最大のヤマ場となるはずだった臨時株主総会を開催前日に中止し、買収防衛策の取り下げを決断。その理由を「SBIが企業価値向上への協調姿勢を示した」と説明するが、背景には国の働き掛けがあったもようだ。
SBIは9月、新生銀経営陣の同意を得ないまま、最大48%の株式取得を目指してTOBを開始した。これに対し、新生銀は10月下旬に反対を表明し、11月25日に臨時株主総会を開いて防衛策発動について株主の判断を仰ぐと表明。その後、TOBをめぐる双方の対立が続き、臨時総会での対決が濃厚となっていた。
事態が大きく動いた背景には、新生銀の大株主の国が、買収防衛策への反対に傾いた事情もある。子会社の整理回収機構とともに計2割超を保有する預金保険機構は、防衛策を認めるには買収で企業価値が毀損(きそん)されるという合理的な理由が必要だとして、少なくとも賛成はできないとの判断を固めていった。
このまま総会に突入しても防衛策は否決される公算が大きく、新生銀は譲歩を決断。SBIが経営方針や事業戦略を尊重し、業務運営の安定性に配慮して経営体制を移行すると確認できれば、防衛策を取り下げると伝達。SBIもこれに応じた。
土壇場の和解について、関係者は「国も双方に協議を呼び掛けていた」と指摘。SBI側からは「『敵対的買収』と世間のそしりを受けずに済む」と歓迎する声が聞かれた。
SBIはこのまま12月8日が期限のTOBを続ける。今後の焦点は、新生銀株の保有比率を7%超に引き上げた旧村上ファンド系投資会社や5%弱を保有する香港の投資ファンドなど「物言う株主」がTOBに応じるかどうかだ。SBIは買い付けに下限を設けていない。TOBが成立しても目標の48%を大幅に下回れば、新生銀の経営が安定せず、迷走が続くことにもなりかねない。
【時事通信社】
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